エコ

穏景の家のお施主様は、エコロジーに大変ご理解がありました。

この当時の打合せでは「エコWILL」の選択を検討されておられました。

エコウィルは福井ではあまりなじみがありませんが、都市ガスが普及している地域ではよく知られているエコキュート同様かなり進んだ考え方の給湯器&発電機です。
コージェネレーションシステム(コージェネ)と言って、ガスで動くエンジン(HONDA製)で発電を行い、その際に発生する排熱を給湯などに利用するものです。

発電所から家庭まで電気を送ると送電線で多くの電気が失われてしまいます。
そこで、ほぼ100%の量で供給できるガスにより、家庭内で発電させてしまおうと言う発想と、その発電により発生した熱も家庭で利用しようと考えて生まれました。

しかも、行く末は家庭内で余った電気をお隣さんやコミュニティーで分け合えるような仕組みまで想像しているとか・・・。

今はエネゴリくんで有名な家庭用燃料電池エネファームが発売され、そちらが脚光を浴びるようになりましたが、エコウィルはそのさきがけと言ってもいい低炭素化にかなり貢献できるシステムです。

よく、お施主様はエコウィルを福井にいてご存知だったと。
そこからもお施主様のエコロジーへの関心を感じ取ることができます。



最終的にはエコキュートに落ち着くことになりました。

それはエコウィルは電気の使用が多いご家庭であるほどメリットが出てくる商品だった為、イニシャルとランニングのコストを穏景の家のお施主様のライフスタイルで試算したところ、現状ではエコキュートの方が適しているのではないか?と思われたからです。

とにかくエコロジーに拘られたお住まいを検討なさっていました。

ファサード

イメージマップなどから穏景の家のお施主様の好みのファサード(外観)は、水平方向へ伸びやかなイメージがお好きなようでした。

それにより屋根の勾配の方向や屋根の形状が考えられるのですが・・・
福井は雪が降ります。
もちろん雪止めによって雪の落下は止める試みはするのですが、完璧とはいえません。
屋根勾配に向かって玄関など入っていくのは、落雪の危険が無いとは言えません。
そこで切妻方向からの進入が望ましいのですが、ファサードのイメージと安全性などを加味した上でプランニングの検討を進めていました。

今回の打合せ(Type-15)では、そろそろファサードの方向性をまとめようという話になりました。

思い起こすと、穏景の家のお施主様はまるで私たち(建築デザイナー)のように、インテリア(間取りなど)とファサードの両方のご要望がバランスするように、ご自分の中でも試みておられたと感じます。
空間構成をイメージする力が、一般的な範囲をずっと超えておられ、プロ顔負けなほどです。(笑)

穏景の家もファサードは当然に重要なファクターのひとつでした。

マテリアル(素材)の役割

マテリアル(素材)には色々な役割を持たせることが出来ます。
安穏の家では、マテリアルに様々な役割を持たせ、選択をしてます。

facade12例えば玄関ドアは、ミニマルなファサード(外観)とは一見似つかわしくないような印象的な素材感となっています。

これは無垢の木製ドアを釿(ちょうな)仕上げで仕上げたものです。

荒々しく民芸的なテイストを感じるのではないでしょうか?

どうしてミニマルなファサードに釿仕上げのドアとしたのか?
それはインテリアの方向性の暗示の役割を持たせたためです。


エクリュではプランニングをする際、同時にインテリアの方向性を検討していきます。
そうしないと理想の空間を計画することが不可能だからです。

安穏の家のインテリアの方向性は、冷たくはないが禁欲的な空間の中、形状はシンプルではあるがバリの家具を思わせるような手のぬくもりを感じるようなつくりの天板のダイニングテーブルなど、ミニマル&民芸と表現できそうな家具が配置されるのが、イメージでした。

ミニマルだけど荒々しさの中にある温かみを感じる家具が、冷たくはないが禁欲的な空間の中にレイアウトされている。
その雰囲気をファサードからも感じ取れるように釿仕上げのドアを選択しました。

マテリアルの役割 その1
インテリアの方向性の暗示

次の例はルーフテラスのウッドデッキ材であるイペ材に持たせた役割です。

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これはお施主様の顕在化したご要望でもあったのですが、ルーフテラスは「まさにウッドデッキ!」と感じるウッドデッキにして欲しいとのご要望がありました。

イペ材はよくウッドデッキなどに使われる材料です。
すごく硬い木で、風雨からの劣化が無垢材にしては遅く、マリーナ(ヨットハーバー)などで利用されることも多いほど耐候性に優れた材料です。

「まさにウッドデッキ!」とはその耐候性もさることながら、ご要望の真意は別にあったと理解しています。

それは「外である」ことの暗示です。

安穏の家は内外の繋がりを強調させることを意識し、壁の位置や開口部の位置などを決めています。
床も内外で同じ面にしているのは、内部空間が外部空間につながっていき、広がりを感じられる様に図ったためです。

内外の繋がりを強調するためには、床の材料も同じにした方が効果的です。

「安穏の家」という名前になったのは「心静かに落ち着いているさま」をコンセプトにしたお家だからです。
「落ち着く」この感覚を実現させるために色々なことをしていますが、そのひとつに「内部空間にいることを意識する」ということがあります。

「車の中が落ち着く」という人が結構います。
それは車が好きだと言うこともありますが、シートにすっぽり納まった感じやこじんまりとした空間が、外部に対して自分達の空間という意識が強くさせるからだと思います。
また、外が良く見えているところもミソです。

外を意識できないと内であることを認識できませんからね。

つまり「まさにウッドデッキ!」というのは「明らかに外」とすることで内部にいる意識を強調し、そこに「落ち着き」がうまれるからだと理解しました。

マテリアルの役割 その2
エリア分けの暗示

最後の例は最も一般的なもので、1階と2階の床仕上げ(タイル)の素材感の違いです。

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081101 (1)玄関を入って玄関土間やエントランスホールなどの床仕上げは鏡面のタイルを使用しています。

直射日光が入りやすい南側に窓があるエントランスホール。

鏡面の床タイルと直射日光は、2階にある安穏のリビングと相反して緊張感などを感じさせることを計画しました。

鏡面の床タイルは窓から取り入れた日光など光を反射させやすい性質があります。


living07それに対し、2階のLDKの床タイルの表面はマットな仕上りになっています。

また窓を北面に持ってくることで直射日光が入りにくいように計画しました。

北側にある白い壁に反射した日光は、乱反射し、マットな表面のタイルに吸収されていきます。

光がチカチカしないことで落ち着いた感じを計画しました。

マテリアルの違いで緊張と安穏を導き出し、また、対比によってそれらを相互に引き立たせました。


マテリアルの役割 その3
感覚の誘導

窓の役割

よく「南向きの窓がいい」と言います。

確かに夏あまり直射日光が入らず、冬には沢山直射日光が入るという意味で、日照条件が最もいい窓は南向きの窓です。

しかし窓には色々な役割があります。

例えば、風を通すための窓。
例えば、景色を取り込むための窓。
例えば、光を取り込むための窓。
こんな風に様々な役割があります。

仮に光を取り込む窓であったとしても、光の質があります。

照明計画をする際、「間接照明がほしい」と言われることが結構ありますが、間接照明は呼んで字のごとく壁や天井などに一度光を当て、間接的に光を取り込む方法で、直接光とは違ったやわらかい光が演出できます。

太陽光も同じで、どのように光を取り込むか?
つまり、どの方向に窓を設けるか? どの高さに窓を設けるか? どんな形状の窓を設けるか?
それによって光の質を変えることができます。


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漆喰の納まり

今回、木製建具の納まりや、窓台などの納まり、各部分の取合いなど、よりシンプルに見えるような工夫を検討します。

そのイメージスケッチを見ていただきました。
大変難しい納まりで・・・職人さんが音を上げてしまうかも知れません・・・。
何とかお願いをして、そう納めていただくようにお話します。