マテリアル(素材)

マテリアルに関しては、初回のお打合せの時からずっと全くぶれること無く仰ったことです。

20年後ぐらいに味わいの出る家がいい。
だからマテリアルに関しては本物を使用したい。
朽ちていく美しさが表現できるのは本物のみ。

「凝縮の家」のお施主様は有名なめがねのデザイナーさんです。
そのため、お施主様から今回の家のコンセプトと表して何度もプレゼンテーションしていただきました。
初めての経験でした。(笑)

素材集のコラージュもいただきました。

「凝縮の家」は以下の素材で構成されています。

・ 漆喰
・ 木(スギ)
・ 金属(ステンレス)
・ ガラス
・ コンクリート

それぞれの素材にはそれぞれの特徴があります。
例えばステンレスは硬くて冷たくて角があるイメージなど。
素材の持っている特長を変化させず、そのまま使用するのが凝縮の家の特徴でもあります。

無理に強制せず、自然に。
自然に任せて朽ちていく趣も楽しむ。
そんな考えが込められています。

あと、スギの床を選択した大きな理由は、スギはやわらかい木なので木目の夏目と冬目が朽ちていく間にはっきりしていき、美しくなることを予想してのことです。

そもそも家は竣工が完成ではありません。
暮らしが始まってお施主様の色合いが落とし込まれていって完成に近づいていくものです。
「素材が朽ちていく」というのは、悪くなっていくということでは無く、例えばよく歩くところの床は減りが多くなるなどの生活習慣などを刻み込み、意味や歴史やそのようなものが沁み込んでいくという意味なんだと思います。

家は家族と過ごす場所

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「しぜん体の家」を語る上で「家族」は外すことができません。

どのご要望にも「家族」という名詞が付随されていたと感じます。

・家族と一緒に学ぶスペースが欲しい
・家族でお月見などの行事を楽しみたい
・いつも家族の気配を感じられるようにしたい

全ては家族といたい場所(スペース)として設計されたと感じます。

家族をつなげるアイテム。
これは2004年のときから変わらずいただいてたご要望です。

それは吹抜けのある家。

ただ、わたしの中で矛盾がありました。
家族と一緒に過ごす感じを建物として演出するには、空間がこじんまりとしている方が向いていると思ったかたです。
あまりに空間が広がると、一緒にいるという感覚は薄れてしまいます。

そこで、空間を近付ける(狭く見せる)ような工夫をしました。

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吹抜けの天井面は2階の天井面より550mm程下げて、吹抜けのCH(天井高さ)を2階とのつながりを殺さず、出来るだけ低くなるようにしました。

次に吹抜けの天井面を黒い色に塗装し、天井に重みを持たせることで空間が膨張して見えないようにしました。

こじんまりととまではいかないまでも、一体感は感じ取れる程度の広がりとして、抑えることができました。

楽しくなくっちゃお家じゃない

「想像力の家」のお施主様とはじめてお会いしたのは「つながりの家」の内覧会でした。
もっとも印象に残っているのは、楽しそうに家への想いを語られるご主人の姿です。
今でもはっきりと、映像で記憶しています。

ご主人とお話しすると、とても理論的でまた距離感といいますか、コチラの立場を守っていただいていると感じられる、いわゆる大人の会話をされる方です。

しかし、そのご主人のおうちへの想像は、まるで秘密基地のような、ワクワク感が満載のイメージを受けました。
そう、最初にお会いした日、楽しそうにお家への想いを語られてた、あの日のご主人の印象のままです。

e0147412_1641754お風呂の向こう側には裸のままで外に出ることが出来るインナーテラスがあります。

そのインナーテラスはキッチンにもつながっており、お風呂上りにほてる体を冷ましながらビールを喉に落とし込むといったイメージのことが出来るようなレイアウトになっています。

このご要望は初回の打合せ(2006年1月22日)の時にお風呂へのこだわりを話され、またその後(2006年2月23日)には露天風呂のようなお風呂と表現されています。

最初から、いや、家を考え始められた頃(エクリュと出会う前)からずっと想い続けてこられたのだと思います。

e0147412_165226100左写真は子供部屋のベッドの写真です。

ベッドを造り付けにした理由もご主人の子供の頃からの「夢」ではないかと勝手に思っています。

子供部屋にはロフトが欲しいと、これもかねてからずっと仰ってました。

ロフトと言えるのか、どうかはありますが、ベッドが2段ベッドの上のほうだけみたいな感じになりました。

しかも、このベッドの頭の部分には単行本のマンガが収納できる本棚が設けてあり、やっぱり秘密基地のような雰囲気があります。

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写真は主寝室へ続くキャットウォークです。
やはりこれも最初の打合せからご要望としてあがっていました。

思うのですが、ご主人は日常の中に非日常的な要素が欲しいと思われていたのだと感じます。
例えば安定に対しての不安定だったり、奥に見えているストリップ階段も最初からのご要望ですが、お施主様の言葉は「オブジェ的な階段が欲しい」と表現されています。

単調になりがちの日常だから、ちょっとした刺激がある非日常を求められたのだと思います。

そこで、このキャットウォークには特徴があります。
それは手摺り壁の高さです。
建築基準法では落下防止手摺りの高さは1100mm以上と定められています。
ですので、大体どこの手摺り壁も1150~1200程度の高さになります。
しかし、「想像力の家」の手摺り壁の高さは550mm程度です。
FIX窓を入れ込んでいるので、建築基準法の落下防止手摺りの基準は免れます。

こうすることで、キャットウォークの非日常間をさらに増幅させました。

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上写真は主寝室に併設されているご主人の書斎です。

後ほどご説明しますが、「色」は「想像力の家」のなかで重要な役割を果たしています。
この書斎は全て真っ赤。

また、開口部から吹抜けを通しリビングの雰囲気を感じ取れるようにしてあります。

e0147412_1726392左写真は和室です。
あえての2畳の和室です。

「ご飯を食べた後ゴロっとしたい」とのご要望がありましたが、この和室でゴロッとすると朝になっていると思います。(笑)

かなり落ち着きます。

あと、段差も日常を切り替える上で重要な役割を果たしています。

この和室は壁にあいている穴へ入っていくイメージになっています。
壁の向かうにこっそり部屋があるといった感じ。
ちょうど忍者屋敷のような感じでしょうか?(笑)

守られているような安心感が得れます。

e0147412_17294329何だかワクワクするような、その場所へ行きたくなるような、そんなスペースがいっぱい詰まった「想像力の家」です。

内外のつながりとプライバシー

e0147412_1437373何度かエクリュの内覧会へお越しいただいていたので、「お日さまの家」みたいな開放感などと具体的に共通認識を図れたのが「内外のつながり」でした。

隣地(東側)が2階建ての共同住宅の為、プライバシーの確保は充分にしたい。

ただ、内外のつながりがあって開放感のあるリビングにしたい。

そしてカーテンはしたくない。

このご要望にパティオ(中庭)を設けることで解決させました。

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外への視覚的な広がりを演出するには、内部の壁や床や天上面が外部までつながっていくと目線が外へ誘導されます。
また、色も内外で同じ色使いだと一体の空間として認識されます。

「奥のある家」はもうひとつの要素をプラスしました。
それはエリアの感覚です。

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部屋に窓が付いていて外が見えています。
窓が外の世界とつながる唯一のアイテムです。

奥のある家_図2

次ぎは外との境界の壁を無くし、すべてガラスの壁としました。
最初の絵からするとかなりOPENになり、開放的です。

奥のある家_図3

2つ目の絵から縁側や軒や袖壁を追加しました。
外の視界は減りましたが、外への意識が少し強調され、内外の区別が薄れ、外とつながっていく感じが追加されました。

奥のある家_図4

さらに縁側や軒や壁を外へと延長しました。
さらに外の視界は減りましたが、(近くの)外がより中へ取り込まれた感覚を覚えます。
内部空間から外がより身近なものになりました。

奥のある家_図5

これが「奥のある家」の考え方ですが、外の一部を切り取り、自分のエリアとしました。
外を取り込むと言うよりは、内部空間に外を付随させるといったイメージでしょうか?
外部であるのに一体の空間に見え、視界的な広がりでは無く、自分のエリアの感覚が広がりました。
この感覚(エリア)を「奥のある家」の広がりとしました。
そうして、プライバシーを確保しつつ広がりを意識できるようにしました。

些細なことの積み重ね

ひとつひとつは、些細なこと。

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コーニス照明に照らされている壁が外部(ルーフテラス)まで伸びる。
同一面で、サッシによる凹凸もなく、フラットに外へ延びる壁。

実は結構難しい。
そしてコストもかかる。

そんなことならちょっとぐらいバチってもいい(ずれてもいい)と思う人もいるかもしれないけど、コレがバチるかバチらないかでは実は感覚的に大きな違いがあるとプロからは感じる。

感覚や感性は自然に備わったモノのように思えたりするが、知識により増幅されることの方が大きいと感じる。知識や知性は感覚や感性のブースターだと思う。

この写真。
実は壁だけじゃなく、床も天井(軒裏)も同面になっている。
それをサッシは邪魔していない。
ガラスのみが空間を仕切る。

実は結構施工が大変。
手間もコストもかかる。
色々な方々のご理解、ご協力を得れないとこんなカタチにはならない。

でも、ひとつひとつは些細なこと。
本当はコトはそんなに大げさではなく、知識や感性などが無ければ気付けないほどの些細なコトの積み重ねによって生まれてくる。

誰にでもわかることや、誰にでも明らかなことは、本当のコトではないのかも知れない。

ネコのトイレ

ネコを飼われているお施主様は、ネコの気持ちも忘れなかった。動物を飼われている方の共通の問題点としてトイレのにおいがある。その解決策として、今回のケースでは、人間用のトイレに隣接した所の壁をクボませ、そこをネコ用トイレにする事で、人間用といれの換気と併用させた。
これでネコも落ち着いて用をたせるだろう・・・。

リビングの収納は、ちょっと回り込んだところに設置。収納量を減らしてでも収納扉をリビング空間に配置する事を避け、リビングから見える壁としました。

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壁の面積をある程度設けることにより、絵やファブリックパネルを飾ったり、チェストを置いて見せる収納にしたりとインテリアの用途も幅がでます。

色の印象の利用の仕方

e0147412_17344333色にはイメージ(印象)があります。
赤だと元気な感じとか、青だと落ち着いた感じとか。

色によって人の気持ちや感情の起伏もコントロールできるといった研究成果も出ています。
自転車置き場の照明が青白いのは、青白い光の下では人は冷静な判断が出来、他人の自転車を取ってはいけないと冷静な判断が出来るようになり自転車泥棒が減ることを図ってのことです。

その効果は抜群だそうです。

「想像力の家」ではお施主様の求められていた「日常の中の非日常」を色を利用することで表現しています。

e0147412_17454473非日常とは言い換えると変化とも言えます。

一定ではない切り替わる。そんな状況を求められたのだと理解し、「想像力の家」ではスペースごとに色を変えました。

また、徐々に変わるのではなく、指を鳴らした瞬間に変わるようなイメージ、つまり瞬時に変わるように色分けの仕方に工夫をしました。

全て出角で色が切り替わっているのがお解かりいただけますでしょうか?

その空間に侵入した瞬間に印象が変化できるように考えた結果です。

「想像力の家」では色は日常に変化をもたらすために利用しました。
そのことで単調ではない日常(非日常)を感じていただきたいと考えました。

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ファサードから感じ取られるモノ

ファサードの違い2

上のパースは一番最初の打合せの際(2005年10月15日)、お施主様がご自分で描かれ持って来られた実際のパースです。

一般的(何が一般かは解りませんが・・・)には間取りがとても重要でファサード(外観)は結果で決まる場合が多いのではないでしょうか?

エクリュのお施主様は皆さんファサードはとても重要視されますので、間取りをする際には当然にファサードを意識しながらプランニングをしますが、「凝縮の家」のお施主様は一番最初の打合せ(ファーストヒアリング)の際に、しかもご自分で描かれたパースを持って来られました。

そのことからもいかにファサードが重要であったかがご理解いただけると思います。

また、この最初のパース。
白い方の建物をよぉ~く観ていただけるとお解かりいただけますでしょうか?
茶色の板戸の上部に鉄でつくった様な侵入防止の柵が解りますか?

この建物のイメージはヨーロッパの建物のようにパティオ(中庭)を設け、そのパティオ越しに空間がつながることをイメージして描かれてあります。

鉄柵はこういった考え、アイデンティティのようなものがファサードに漏れ出しています。

実はこの日、ヨーロッパの建物になぜ中庭があるのか?
その話で一日を使ってしまいました。(笑)
この話は、長くなるので、興味がお有りの方は、エクリュまでご連絡下さい。

ファサート上記のようなこともあり、ファサードからはこの建物のアイデンティティが感じられるような、そんなファサードにしました。

この建物のコンセプトですが、、、
これもお施主様がご自分でプレゼンテーションされましたので、エクリュがご提案したわけではありませんが・・・3つあります。

それは以下です。

・ SIMPLE

・ MINIMAM

・ MATERIAL

この3つのコンセプトがしっかりと表現できるファサードとしました。

形状的には長方形の建物外観に長方形のドアが付いているだけのいたってシンプルなもの。
窓などは一切付けませんでした。
必要最小限の線の本数で描ける外観です(ミニマル)。

また外壁は本漆喰壁仕上げで、ドアはスギ板で製作しました。
ドアの押し棒も本物の鋳物を使用。
素材(マテリアル)はとことん本物にこだわりました。
ポーチや玄関土間は装飾的な仕上げをしない、コンクリートのコテ押えとしました。

プレゼンボード

▲上写真はお施主様がご自分でつくってこられたプレゼンボード

温かさの表現

e0147412_20184157アットホームと言うか、スウィートホームと言うか、温かみのある雰囲気が「しぜん体の家」には必要でした。

左の写真は下足箱ですが、既製品の下足箱だけではいくら色合いを検討してもシンプルで軽く見えてしまうので、木製カウンターを設けて天板の厚みを厚く見せました。

そのことで、軽さがなくなり頼り甲斐があると言うか、温かみのような雰囲気を出すことが出来ました。

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階段のササラやさらしの梁も空間に温かみを出す為に選択した形状です。

但し、単に温かみを出すのではなく、形状はシンプルにしなければお施主様の持たれているイメージに近付けませんでした。
微妙なエリアを探り、色合いや形状など計画しました。

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キッチンの前のカウンタ(食器棚)も扉を閉めていると一体の立体に見えるようにし、木質もボリューム感を出すのに一役かっています。