白という選択

空間の大部分を占める壁、天井の色に白を選択しました。

何もない状態だとかなり殺風景な印象を受けます。

e0147412_15271790

しかし、建物には家具や雑貨やウインドゥトリートメント(カーテンやブラインド等)が入り、そこに住まう人たちの生活がプラスされて、色合いやイメージのバランスが取れるんではないでしょうか。

e0147412_15303999

e0147412_15305790

キーコンセプト

お施主様からの要望、「倉庫のような家」、「どこからでも入れる感じ」、「人が集まる」などから、2つのキーワードが導きだされた。
それは「圧倒的開放感」と「安定感(あるいは安心感)」だ。
「お日さまの家」ではこの2つが設計・施工する上でのキーコンセプトとなった。
しかし、解放は安心を損ない、安心は解放を損なうおそれがある。

開放感と安心感

お日さまの家では、相反する二つの要素をいかに両立させるかが課題となった。

スープの冷めない距離

リビングから続くタタミコーナー。家族の気配を感じながらプライベートを確保出来る空間、ここは夫の為のスペースです(たまに来客の宿泊スペースに代わったり)。

寂しくないように皆のそばがいいようです。

e0147412_14493572

e0147412_14502384

ライトグリーンの収納戸は、床から浮いて見えるようにというのが夫のこだわりです。

そして、そんなこだわりの収納戸の後ろにあるのは・・・・・マンガです。

枠は額縁

窓枠は景色を切り取る「額」のようなモノです。
枠の形状で景色を見るイメージも変わってきます。

例えばバロック調の装飾的な窓枠の場合、外に見える景色はパリの街並みでしょうか?
例えばアールヌーボ調の装飾が施された窓枠の場合、外に見える景色はバルセロナの街並みでしょうか?

こんな風に、窓枠の形状だけでも窓に映る景色を想像することができたりもします。

写真は食粋の家の窓枠。
どうしてこんな風な加工が施されているのか?
それはもちろん景色の見せ方などに考えがあります。

45度に加工された窓枠の端部は、出来るだけ窓枠の厚みを見せない工夫です。
トメ加工とも言います。

厚みの無いものは重さも感じない。
トメ加工し、厚みが±0の窓枠は、景色を見るとき重厚感など重さを感じさせず、むしろ景色を自然に取り込めるように工夫しました。

周辺の風景ありきで計画が進んだ食粋の家。
こんな細部にも、その拘りが表現されています。

素材感と色

素材感 と 色

今日は外壁のスギ板部分以外が塗りあがりました。
土っぽいと言うか、モルタルっぽいというか、そんなマテリアルのイメージで選択したザラっとしたテクスチャーとアースカラー。
イメージ通りに仕上がりました。

塗装する前と、塗装してからでは、建物全体から受けるイメージが変ります。
例えば感覚的な重さだったり、印象だったり、そんなものが違ってきます。

そういった意味で、出したかった重みと雰囲気が、塗装されることで生み出されたと感じました。

次ぎはスギ板です。

圧倒的な開放感の実現

開放感とは「外へ広く意識できる感覚」である。「外」とは「内」に対する感覚であり、開放感を得るには、内部空間に自身がいる事をまず意識する必要がある。

図1と2

①では、内と外の区別があるが、開放感という認識は乏しい。
②のように梁と柱を組み内部空間を意識させる事により、開放感という認識がより明確になってくる。

お日さまの家では、水廻りや、L(リビングルーム)・D(ダイニングルーム)以外の部屋が外側に配置された。そのことによって、必要な壁量を確保、構造を安定させながらファブリックスペース(L・D)の壁をなくした。結果、内部にいる人間が天井と床以外を意識しないという「圧倒的に開放的な空間」を生み出すことに成功した。

図3と4

③では木々などの風景が外部にあるものであったのに対し、④ではウッドデッキができたことで、内・外の境界が曖昧になり、内と外の中間的な空間が意識されるようになる。すると、木々などの風景も内部に取り込まれ、内部を外へより広く意識できる。

お日さまの家では、ファブリックスペースの両側にウッドデッキを設け、開放感を強調した。同時に軒を出し、大きな庇(ひさし)を設け陰をつくり内部空間を意識させるなど、内・外の意識に働きかける様々な工夫を施した。

図5

一日のはじまりに、そして一日のおわりに

朝すがすがしい光の中で浴びるシャワー、そしてゆっくりリラックスしながら浸かるお風呂。

育みの家のお風呂は、ウッドデッキへと続く大きなサッシュが特徴。お日さまの家のお風呂の開放感にかなり影響されました。

夏場はサッシュを大きく開け放ちウッドデッキには子供用にビニールプールを張り、プール開きです。リラックス用に付けたサウンドシステムから常夏調の音楽をかけ、気分は南国です。

e0147412_1438724

日本人のアイデンティティ

ヨーロッパの歴史的建築物に入ったとき受ける印象と日本の歴史的建築物に入ったとき受ける印象で最も違って感じるのは開口部の位置です。

ヨーロッパの歴史的建築物は石やコンクリートで出来ており、ボルトと言われるアーチの空間が印象的で、開口部も縦長な窓などイメージが強く残ります。

それに比べて日本のそれは木造で柱と梁からなり、開口部は横に長く広く取られており、開口部と言うよりはむしろ床と天井を柱がつないでいると言った印象で、むしろ壁が無いといったイメージです。

断面イメージ

「静と動の家」のお施主様との出会いは2006年までさかのぼります。

「つながりの家」を見に来られたのが最初です。
しかしそれ以前に色々ご自分でお調べになられたようでした。

当初は数寄屋造りの家に憧れ、そのようなおうちを建てる工務店などを調べられていました。
しかし、本格的な(フェイクではない)数寄屋造りはコストがかなりかかり、自分達がほしいスペースの確保が困難と分かり、今度は純洋式のお家を建てられているハウスメーカーへ行かれます。
しかしこれもヴォレーというヨーロッパの民家なんかによくある観音開きの木製雨戸(鎧戸)が、外壁にビス固定されているフェイクであることを知り、一気に興醒めされ、自分達の家づくりをどこに任せればいいのか路頭に迷っていたところ、ある知り合いからエクリュの事を聞かされ内覧会へお越しになったと言う経路がありました。

そのお話をお聞きした時、「静と動の家」のお客様は「その理由に共感できるカタチ」で構成された家が必要なんだと理解しました。
そしてお施主様の感覚は「日本人のDNA」が脈々と引き継がれていると感じました。

その一例が視界が横に広がる空間です。

e0147412_10453038

リビングの空間は「日本人の感覚」を巧みに利用した空間です。

現在の建築基準法や、エクリュの基準である偏心率を考えると、中々難しいですのが、壁倍率を高めるなどし横長の大開口と出来るだけ空間内部に壁を設けないようにしました。
そのことにより、床と天井のラインが強調され、横方向の広がりを見せることができました。

実は、この横方向の広がりを協調するための仕掛けは、リビングの空間にいざなう階段室から始まっています。

e0147412_114406階段室は吹き抜けになっており、2層分の縦方向の空間になってます。

階段を上る時の目線の動きは当然上に向かいます。つまり、縦方向の目線の動きになります。

それを協調する為に、階段巾は建築基準法限度まであえて絞りました。そうすることでより高さ方向を協調しました。

「狭く高い縦の空間を抜けると、そこは横に広がるのびやかな空間だった」

そんな印象を得てもらえるように階段室を検討しました。

日本の歴史的建築物の断面イメージは先ほどご説明したとおりですが、もうひとつ重要なポイントがあるように思います。
それは縁側の存在です。

上の写真はわたしの実家の近くにある奈良の慈光院です。
子供の頃、よく両親に連れて行ってもらいました。

この慈光院の写真でもお解かりいただけるように、縁側は庭園の風景をを室内に取り込むのに一役買っています。

庭に向かって伸びるように貼られた板の貼方向は目線を庭園に誘導します。
また、内部空間とも外部空間とも取れる中間的なイメージが、より庭園を身近なものに感じさせます。

それらは自然を愛し敬ってきた日本人の心が、カタチとして結晶化したものではないでしょうか?

e0147412_11124057

「静と動の家」もそういった日本人としてのアイデンティティを大切に考え、カタチにしています。

床・壁・天井は外へ伸びていってます。
これらは外部空間を内部空間へ取り込んでいくためです。

また、外部のウッドデッキの板の貼方向も、慈光院に習って外へ向かうように貼られています。

数寄屋造りではありませんが、「日本のアイデンティティ」を込めながら、ひとつひとつカタチにしました。

シンプルかつ存在感のあるキッチン・ダイニング

お日さまキッチン

「システムキッチンのような感じは好まない」。
「シンプルだけど存在感のある(ジョン・ポーソン)が作りそうなキッチンにしたい」との施主の要望により、イメージとしてマットな白い箱(石こう)。そんな長方体の組み合わせによる形状となった。
照明は乱反射を極力抑えたスポットでテーブルのみを照らしシンプルかつクールな照明計画とした。
1Fは、LDKに仕切壁が無い1フロアとなっており、2Fからの荷重を考えると天井芯持材だと梁背が大きくなり、天井埋込み照明の取付が不可能になってしまうため、部分的に集成材を使用し、天井ふところのボリュームを抑えた。
建物外観のイメージ同様、キッチンの柱型巾と天板巾もそろえる必要があったが、W2500m/mを支えなくとばすには無理があった。どうしても調理をすると荷重がかかり下にたわんでしまう。そこでアルミの角パイプ2.0-50×70を使用し軽量化と重量荷重に対して強い構造とした。
また、キッチンシンク背面には、埋め込みの飾り棚があり20hの照明器具が取付く事となっていた。
奥行きが照明器具によって決まっていたため間仕切る壁下地寸法が20m/m程しかなかった。下地を組んで施工すると、厚みが生じる。しかし、シンクまでの寸法も決まっていたため、20m/m厚の積層材を採用し荷重に対しても強く、イメージも壊すこと無く施工する事が出来た。

司令室!?

電話、FAX、パソコン、給湯の管理、インターフォンのモニターは全てキッチン脇のスペースに集約しました。

インターネットでレシピを拾いながら料理したり、正面の壁のコルクボードには、ゴミの日カレンダーやお知らせや、お気に入りの写真等をピンナップ。

e0147412_1538102