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日本人のアイデンティティ

2009年11月6日 / 実績紹介記事 静と動の家

ヨーロッパの歴史的建築物に入ったとき受ける印象と日本の歴史的建築物に入ったとき受ける印象で最も違って感じるのは開口部の位置です。

ヨーロッパの歴史的建築物は石やコンクリートで出来ており、ボルトと言われるアーチの空間が印象的で、開口部も縦長な窓などイメージが強く残ります。

それに比べて日本のそれは木造で柱と梁からなり、開口部は横に長く広く取られており、開口部と言うよりはむしろ床と天井を柱がつないでいると言った印象で、むしろ壁が無いといったイメージです。

断面イメージ

「静と動の家」のお施主様との出会いは2006年までさかのぼります。

「つながりの家」を見に来られたのが最初です。
しかしそれ以前に色々ご自分でお調べになられたようでした。

当初は数寄屋造りの家に憧れ、そのようなおうちを建てる工務店などを調べられていました。
しかし、本格的な(フェイクではない)数寄屋造りはコストがかなりかかり、自分達がほしいスペースの確保が困難と分かり、今度は純洋式のお家を建てられているハウスメーカーへ行かれます。
しかしこれもヴォレーというヨーロッパの民家なんかによくある観音開きの木製雨戸(鎧戸)が、外壁にビス固定されているフェイクであることを知り、一気に興醒めされ、自分達の家づくりをどこに任せればいいのか路頭に迷っていたところ、ある知り合いからエクリュの事を聞かされ内覧会へお越しになったと言う経路がありました。

そのお話をお聞きした時、「静と動の家」のお客様は「その理由に共感できるカタチ」で構成された家が必要なんだと理解しました。
そしてお施主様の感覚は「日本人のDNA」が脈々と引き継がれていると感じました。

その一例が視界が横に広がる空間です。

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リビングの空間は「日本人の感覚」を巧みに利用した空間です。

現在の建築基準法や、エクリュの基準である偏心率を考えると、中々難しいですのが、壁倍率を高めるなどし横長の大開口と出来るだけ空間内部に壁を設けないようにしました。
そのことにより、床と天井のラインが強調され、横方向の広がりを見せることができました。

実は、この横方向の広がりを協調するための仕掛けは、リビングの空間にいざなう階段室から始まっています。

e0147412_114406階段室は吹き抜けになっており、2層分の縦方向の空間になってます。

階段を上る時の目線の動きは当然上に向かいます。つまり、縦方向の目線の動きになります。

それを協調する為に、階段巾は建築基準法限度まであえて絞りました。そうすることでより高さ方向を協調しました。

「狭く高い縦の空間を抜けると、そこは横に広がるのびやかな空間だった」

そんな印象を得てもらえるように階段室を検討しました。

日本の歴史的建築物の断面イメージは先ほどご説明したとおりですが、もうひとつ重要なポイントがあるように思います。
それは縁側の存在です。

上の写真はわたしの実家の近くにある奈良の慈光院です。
子供の頃、よく両親に連れて行ってもらいました。

この慈光院の写真でもお解かりいただけるように、縁側は庭園の風景をを室内に取り込むのに一役買っています。

庭に向かって伸びるように貼られた板の貼方向は目線を庭園に誘導します。
また、内部空間とも外部空間とも取れる中間的なイメージが、より庭園を身近なものに感じさせます。

それらは自然を愛し敬ってきた日本人の心が、カタチとして結晶化したものではないでしょうか?

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「静と動の家」もそういった日本人としてのアイデンティティを大切に考え、カタチにしています。

床・壁・天井は外へ伸びていってます。
これらは外部空間を内部空間へ取り込んでいくためです。

また、外部のウッドデッキの板の貼方向も、慈光院に習って外へ向かうように貼られています。

数寄屋造りではありませんが、「日本のアイデンティティ」を込めながら、ひとつひとつカタチにしました。

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