素材感と色

素材感 と 色

今日は外壁のスギ板部分以外が塗りあがりました。
土っぽいと言うか、モルタルっぽいというか、そんなマテリアルのイメージで選択したザラっとしたテクスチャーとアースカラー。
イメージ通りに仕上がりました。

塗装する前と、塗装してからでは、建物全体から受けるイメージが変ります。
例えば感覚的な重さだったり、印象だったり、そんなものが違ってきます。

そういった意味で、出したかった重みと雰囲気が、塗装されることで生み出されたと感じました。

次ぎはスギ板です。

圧倒的な開放感の実現

開放感とは「外へ広く意識できる感覚」である。「外」とは「内」に対する感覚であり、開放感を得るには、内部空間に自身がいる事をまず意識する必要がある。

図1と2

①では、内と外の区別があるが、開放感という認識は乏しい。
②のように梁と柱を組み内部空間を意識させる事により、開放感という認識がより明確になってくる。

お日さまの家では、水廻りや、L(リビングルーム)・D(ダイニングルーム)以外の部屋が外側に配置された。そのことによって、必要な壁量を確保、構造を安定させながらファブリックスペース(L・D)の壁をなくした。結果、内部にいる人間が天井と床以外を意識しないという「圧倒的に開放的な空間」を生み出すことに成功した。

図3と4

③では木々などの風景が外部にあるものであったのに対し、④ではウッドデッキができたことで、内・外の境界が曖昧になり、内と外の中間的な空間が意識されるようになる。すると、木々などの風景も内部に取り込まれ、内部を外へより広く意識できる。

お日さまの家では、ファブリックスペースの両側にウッドデッキを設け、開放感を強調した。同時に軒を出し、大きな庇(ひさし)を設け陰をつくり内部空間を意識させるなど、内・外の意識に働きかける様々な工夫を施した。

図5

一日のはじまりに、そして一日のおわりに

朝すがすがしい光の中で浴びるシャワー、そしてゆっくりリラックスしながら浸かるお風呂。

育みの家のお風呂は、ウッドデッキへと続く大きなサッシュが特徴。お日さまの家のお風呂の開放感にかなり影響されました。

夏場はサッシュを大きく開け放ちウッドデッキには子供用にビニールプールを張り、プール開きです。リラックス用に付けたサウンドシステムから常夏調の音楽をかけ、気分は南国です。

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日本人のアイデンティティ

ヨーロッパの歴史的建築物に入ったとき受ける印象と日本の歴史的建築物に入ったとき受ける印象で最も違って感じるのは開口部の位置です。

ヨーロッパの歴史的建築物は石やコンクリートで出来ており、ボルトと言われるアーチの空間が印象的で、開口部も縦長な窓などイメージが強く残ります。

それに比べて日本のそれは木造で柱と梁からなり、開口部は横に長く広く取られており、開口部と言うよりはむしろ床と天井を柱がつないでいると言った印象で、むしろ壁が無いといったイメージです。

断面イメージ

「静と動の家」のお施主様との出会いは2006年までさかのぼります。

「つながりの家」を見に来られたのが最初です。
しかしそれ以前に色々ご自分でお調べになられたようでした。

当初は数寄屋造りの家に憧れ、そのようなおうちを建てる工務店などを調べられていました。
しかし、本格的な(フェイクではない)数寄屋造りはコストがかなりかかり、自分達がほしいスペースの確保が困難と分かり、今度は純洋式のお家を建てられているハウスメーカーへ行かれます。
しかしこれもヴォレーというヨーロッパの民家なんかによくある観音開きの木製雨戸(鎧戸)が、外壁にビス固定されているフェイクであることを知り、一気に興醒めされ、自分達の家づくりをどこに任せればいいのか路頭に迷っていたところ、ある知り合いからエクリュの事を聞かされ内覧会へお越しになったと言う経路がありました。

そのお話をお聞きした時、「静と動の家」のお客様は「その理由に共感できるカタチ」で構成された家が必要なんだと理解しました。
そしてお施主様の感覚は「日本人のDNA」が脈々と引き継がれていると感じました。

その一例が視界が横に広がる空間です。

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リビングの空間は「日本人の感覚」を巧みに利用した空間です。

現在の建築基準法や、エクリュの基準である偏心率を考えると、中々難しいですのが、壁倍率を高めるなどし横長の大開口と出来るだけ空間内部に壁を設けないようにしました。
そのことにより、床と天井のラインが強調され、横方向の広がりを見せることができました。

実は、この横方向の広がりを協調するための仕掛けは、リビングの空間にいざなう階段室から始まっています。

e0147412_114406階段室は吹き抜けになっており、2層分の縦方向の空間になってます。

階段を上る時の目線の動きは当然上に向かいます。つまり、縦方向の目線の動きになります。

それを協調する為に、階段巾は建築基準法限度まであえて絞りました。そうすることでより高さ方向を協調しました。

「狭く高い縦の空間を抜けると、そこは横に広がるのびやかな空間だった」

そんな印象を得てもらえるように階段室を検討しました。

日本の歴史的建築物の断面イメージは先ほどご説明したとおりですが、もうひとつ重要なポイントがあるように思います。
それは縁側の存在です。

上の写真はわたしの実家の近くにある奈良の慈光院です。
子供の頃、よく両親に連れて行ってもらいました。

この慈光院の写真でもお解かりいただけるように、縁側は庭園の風景をを室内に取り込むのに一役買っています。

庭に向かって伸びるように貼られた板の貼方向は目線を庭園に誘導します。
また、内部空間とも外部空間とも取れる中間的なイメージが、より庭園を身近なものに感じさせます。

それらは自然を愛し敬ってきた日本人の心が、カタチとして結晶化したものではないでしょうか?

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「静と動の家」もそういった日本人としてのアイデンティティを大切に考え、カタチにしています。

床・壁・天井は外へ伸びていってます。
これらは外部空間を内部空間へ取り込んでいくためです。

また、外部のウッドデッキの板の貼方向も、慈光院に習って外へ向かうように貼られています。

数寄屋造りではありませんが、「日本のアイデンティティ」を込めながら、ひとつひとつカタチにしました。

シンプルかつ存在感のあるキッチン・ダイニング

お日さまキッチン

「システムキッチンのような感じは好まない」。
「シンプルだけど存在感のある(ジョン・ポーソン)が作りそうなキッチンにしたい」との施主の要望により、イメージとしてマットな白い箱(石こう)。そんな長方体の組み合わせによる形状となった。
照明は乱反射を極力抑えたスポットでテーブルのみを照らしシンプルかつクールな照明計画とした。
1Fは、LDKに仕切壁が無い1フロアとなっており、2Fからの荷重を考えると天井芯持材だと梁背が大きくなり、天井埋込み照明の取付が不可能になってしまうため、部分的に集成材を使用し、天井ふところのボリュームを抑えた。
建物外観のイメージ同様、キッチンの柱型巾と天板巾もそろえる必要があったが、W2500m/mを支えなくとばすには無理があった。どうしても調理をすると荷重がかかり下にたわんでしまう。そこでアルミの角パイプ2.0-50×70を使用し軽量化と重量荷重に対して強い構造とした。
また、キッチンシンク背面には、埋め込みの飾り棚があり20hの照明器具が取付く事となっていた。
奥行きが照明器具によって決まっていたため間仕切る壁下地寸法が20m/m程しかなかった。下地を組んで施工すると、厚みが生じる。しかし、シンクまでの寸法も決まっていたため、20m/m厚の積層材を採用し荷重に対しても強く、イメージも壊すこと無く施工する事が出来た。

司令室!?

電話、FAX、パソコン、給湯の管理、インターフォンのモニターは全てキッチン脇のスペースに集約しました。

インターネットでレシピを拾いながら料理したり、正面の壁のコルクボードには、ゴミの日カレンダーやお知らせや、お気に入りの写真等をピンナップ。

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廊下の突当りはいつもドア

e0147412_20532112エクリュのお客様は大きく2通りのご要望の伝え方をされます。

1つは、考え方や理論的な表現方法でお伝えいただく場合。
「カタチには意味を持たせて欲しい」(安穏の家・静と動の家)などのご要望はコレに当たります。

それに対して「廊下の突当りはドアで終わって欲しい」などと具体的なご要望をいただくことがあります。
多分それはお施主様の頭の中で、何らかの映像が観えているのだと思います。

「奥のある家」のお施主様はそちらのタイプでした。

何か雑誌など見られてその印象が脳裏に焼き付いておられるのか?
どこかのお店で見られたのか?

もしそうなら、実際に同じものを見れれば話も早いのでしょうけど、中々そうはいかない場合があり、その場合理解するのが難しい時もあります。

「廊下の突当りはドアがいいんです」

「奥のある家」のお施主様からのご要望でした。
当然に「どうしてか?」とお施主様にお聞きしても答えは返ってはきません。
「理由は無いけどそうして欲しい」と仰るだけでした。

でも、そこにきっと潜在的なご要望が隠されているはずだ。
そう考えひとつのことが思い浮かびました。

それはAという空間からBという空間へ移動をする感覚を明確にし、B空間への気持ちの切り替えや期待やそのようなものが生まれる感覚を求められているのではないか?と。
お施主様の当時のお住まいもいつ行ってもモデルルームのように片付くというよりデコレーションされていました。
つまり、ドラマチックな空間であったり感覚を求められているのだと「廊下の突当りはドア」を受け止めました。そして移動のプロセスに演出があり、廊下の突き当りがドアになるように検討しました。

例えば写真の廊下のダウンライトは左側に寄っています。
これは廊下の空間を均等に照らすのではなく陰影をつけることによって趣きを出したいと思ったからです。
微かな違いがドラマティックな演出につながると考えました。

また、あえて廊下は長く閉鎖的にしました。
窓などは設けず外からの情報をシャッターアウトし、自分自身の中のインスピレーションを感じ取りやすくしました。

これが「奥のある家」という名前になった由来です。

奥へ進む感じは色々な想像をかきたてます。
その先には何があるのだろう?
明るいのかな?暗いのかな?
プロセスが長ければ長いほど、その想像は膨らみ豊かなものになります。

「廊下の突当りはドアがいい」はエクリュ的には「異空間への想像のふくらみ」が必要と訳しました。

その先があるから

e0147412_16405795「路地のようなスペースが欲しい。 若杉にあるはなまるきって居酒屋は知ってますか? あの感じが路地のイメージなんです。」

最初の頃に仰られたお施主様からのご要望でした。

左の写真は実際のはなまるきのエントランスの写真です。

当初は必ずプランの中にこのようなスペースがあったのですが、プランニングを進めていく中、どうしても他のスペースの方に(ご要望の)ウェートが重くなり、このような路地をエントランス部分につくることは出来なくなっていきました。

でも、お施主様はあきらめませんでした。

いつもエクリュでお話させていただくコトなんですが、欲しいものが手に入る方法は何かご存知ですか?

お金ですか?
誰とパートナーシップを組むかですか?

もちろん物理的な要因は否定できません。
でも、最も大切なもののひとつに「切なる想い」・「強烈な願望」があるのだと思います。

どんなことでもそうですが、コトを進めていく上で障害は避けて通れません。
その障害を乗り越え、目的を達成させるために必要モノは「想い」です。
その想いが強いか弱いかで叶うか叶わないかが決まると感じます。

e0147412_16594056左の写真は「静と動の家」の階段です。

この空間は居酒屋のエントランス空間と同じ役割を果たすことをコンセプトとして設計されました。

本論へ向かう為の序論のような・・・。

そんなイメージの空間です。

先への期待(希望)。

e0147412_1793537ファサードのスリット窓とルーフテラスのスリットはそんなアイデンティティをファサードからも解るようにしました。

写真で建物右側にある(路地的な)階段室を外観からも感じ取れるようにしました。

最初からずっと通して仰ったご要望である「路地的な空間」の意味するところを、建物の中にしっかりと注入できたのは、お施主様の想いの強さがあったからに他ならないと思います。

夢は願い続ければ叶うのだと思います。

それにはその先を期待できる強さが必要なのかも知れませんね。

大きな庇(アーチ型のファサード)

施主の要望として「アーチのようなファサード」「倉庫のような家」があり、結果、立体的で安定感を感じさせる大きな庇のあるファサードとなった。
その形状は図面で決めるのではなく、スケッチで雰囲気を見ながら逆にその寸法を図面に落とし込み、スケッチで得たイメージをキープしながら決定していった。
正面ファサードには、2Fウォークインクローゼットが910m/m持ち出し、しかもその上に屋根が500m/m持ち出した構造となっている。門型アーチをイメージしたファサードには東西の柱型巾が520m/m屋根厚520m/mと制限があったため、持ち出した梁背と屋根タルキ背、野地板厚を考えると、520m/mにするには梁背を下げる必要があった。雪積荷重の事も考え持ち出し梁には、集成材の登り梁を使用し、基礎からφ16m/mのボルトと15KN用オールダウン塗物で固めた。また梁間5mの箇所にも集成材を使用しさらに強固な構造とした。

夫の夢、妻の現実

ちょっと高めのカウンターでコーヒーを飲んだり、食事したりしたいという夫の夢を叶えたキッチンカウンター。

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忙しい朝、朝食をカウンター越しに配膳、そしてリビングからは作業中の雑多な手元が見えないという妻の現実を見据えたキッチンカウンター。

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