ファサードから感じ取られるモノ

ファサードの違い2

上のパースは一番最初の打合せの際(2005年10月15日)、お施主様がご自分で描かれ持って来られた実際のパースです。

一般的(何が一般かは解りませんが・・・)には間取りがとても重要でファサード(外観)は結果で決まる場合が多いのではないでしょうか?

エクリュのお施主様は皆さんファサードはとても重要視されますので、間取りをする際には当然にファサードを意識しながらプランニングをしますが、「凝縮の家」のお施主様は一番最初の打合せ(ファーストヒアリング)の際に、しかもご自分で描かれたパースを持って来られました。

そのことからもいかにファサードが重要であったかがご理解いただけると思います。

また、この最初のパース。
白い方の建物をよぉ~く観ていただけるとお解かりいただけますでしょうか?
茶色の板戸の上部に鉄でつくった様な侵入防止の柵が解りますか?

この建物のイメージはヨーロッパの建物のようにパティオ(中庭)を設け、そのパティオ越しに空間がつながることをイメージして描かれてあります。

鉄柵はこういった考え、アイデンティティのようなものがファサードに漏れ出しています。

実はこの日、ヨーロッパの建物になぜ中庭があるのか?
その話で一日を使ってしまいました。(笑)
この話は、長くなるので、興味がお有りの方は、エクリュまでご連絡下さい。

ファサート上記のようなこともあり、ファサードからはこの建物のアイデンティティが感じられるような、そんなファサードにしました。

この建物のコンセプトですが、、、
これもお施主様がご自分でプレゼンテーションされましたので、エクリュがご提案したわけではありませんが・・・3つあります。

それは以下です。

・ SIMPLE

・ MINIMAM

・ MATERIAL

この3つのコンセプトがしっかりと表現できるファサードとしました。

形状的には長方形の建物外観に長方形のドアが付いているだけのいたってシンプルなもの。
窓などは一切付けませんでした。
必要最小限の線の本数で描ける外観です(ミニマル)。

また外壁は本漆喰壁仕上げで、ドアはスギ板で製作しました。
ドアの押し棒も本物の鋳物を使用。
素材(マテリアル)はとことん本物にこだわりました。
ポーチや玄関土間は装飾的な仕上げをしない、コンクリートのコテ押えとしました。

プレゼンボード

▲上写真はお施主様がご自分でつくってこられたプレゼンボード

色の印象の利用の仕方

e0147412_17344333色にはイメージ(印象)があります。
赤だと元気な感じとか、青だと落ち着いた感じとか。

色によって人の気持ちや感情の起伏もコントロールできるといった研究成果も出ています。
自転車置き場の照明が青白いのは、青白い光の下では人は冷静な判断が出来、他人の自転車を取ってはいけないと冷静な判断が出来るようになり自転車泥棒が減ることを図ってのことです。

その効果は抜群だそうです。

「想像力の家」ではお施主様の求められていた「日常の中の非日常」を色を利用することで表現しています。

e0147412_17454473非日常とは言い換えると変化とも言えます。

一定ではない切り替わる。そんな状況を求められたのだと理解し、「想像力の家」ではスペースごとに色を変えました。

また、徐々に変わるのではなく、指を鳴らした瞬間に変わるようなイメージ、つまり瞬時に変わるように色分けの仕方に工夫をしました。

全て出角で色が切り替わっているのがお解かりいただけますでしょうか?

その空間に侵入した瞬間に印象が変化できるように考えた結果です。

「想像力の家」では色は日常に変化をもたらすために利用しました。
そのことで単調ではない日常(非日常)を感じていただきたいと考えました。

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温かさの表現

e0147412_20184157アットホームと言うか、スウィートホームと言うか、温かみのある雰囲気が「しぜん体の家」には必要でした。

左の写真は下足箱ですが、既製品の下足箱だけではいくら色合いを検討してもシンプルで軽く見えてしまうので、木製カウンターを設けて天板の厚みを厚く見せました。

そのことで、軽さがなくなり頼り甲斐があると言うか、温かみのような雰囲気を出すことが出来ました。

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階段のササラやさらしの梁も空間に温かみを出す為に選択した形状です。

但し、単に温かみを出すのではなく、形状はシンプルにしなければお施主様の持たれているイメージに近付けませんでした。
微妙なエリアを探り、色合いや形状など計画しました。

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キッチンの前のカウンタ(食器棚)も扉を閉めていると一体の立体に見えるようにし、木質もボリューム感を出すのに一役かっています。

カッコイイ

e0147412_15371148「カッケーようにして!」

打合せ中にお施主様に何度も何度も幾度と無く言われました。

「カッコイイ」って何だろう?

実際、お施主様はカッコイイ方です。
背も高いし、男前。
言葉遣いや仕草がスマート。
身の回りに置いてあるのモノは単に収納してあるのではなく飾ってある。
いや、むしろ展示してある。
このことから・・・

・隙のないこと
・すらっとしていること
・見やすいこと(目に留まって心地よいこと)

そう考えました。

e0147412_15523337そこで色々なモノの形状を奥へ伸びていくようにしました。

擬音語で言うと「シュッ」とか「シャー」とかってイメージでしょうか?

そう感じるのは真直ぐ長く伸びていくラインの感じではないかと考えたからです。

縦方向のラインでは無く、横方向に伸びるラインを協調するようにしました。

ひとつは照明計画でそれを表現しました。

またはスリット形状など、カタチでも表現。あとは奥行きを感じられるようにしました。
トイレまでが奥のほうにあります。

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縦の空間 横の空間

縦方向を強調して、幅に圧迫感すら感じさせる階段は、2階にあるLDKの序幕。

縦の空間。

縦の空間・横の空間1

そして続く横の空間。
そのことにより、より広がりを感じる。

縦の空間・横の空間2

家族をつなげる吹き抜け

吹き抜けの役割は、プライベートスペースとファブリックスペースをつなぐ事、直接的ではなく間接的につながっている事で、プライベートを確保しつつ、ファブリックの気配も感じとれる。つまり、プライベートスペースから1歩外へ出ると、家族の気配を感じる事が出来る。逆にファブリックを意識することでプライベートを意識することが出来る。

形状のなかに見る安定感と柔らかさ

柔らかいイメージと安定感を得るために、壁と床及び壁と天井の間に目地(隙間)は設けませんでした(目地があると陰影が出てシープなイメージになります)。

サッシュの取り付く位置、壁を厚く立体的に見えるように等考えながら柔らかいイメージと安定感の共生を図りました。

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装飾の為のスペースは、好きなものを確認するためのスペース

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居間は畳敷きです。
家族が膝を突き合わせているイメージがあって、ソファー(リビング)では無く座卓(居間)としました。

天井の高さを抑えて、家族の一体感を表現しました。
ダイニングとの仕切りの襖を閉めると、こじんまりと落ち着いた和室になります。

床の間はお施主様のご要望でどうしても必要でした。

飾る為のスペースから、四季や移ろいなどを感じていたいとのお施主様からのご要望でした。
飾るスペースは階段上り口にもニッチを設けてあります。

「飾る」という動作は、好きなものを確認する動作に似ています。
家族と好きなものに囲まれての暮らしは、この上ない豊かさかも知れません。

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こじんまりが心地よい

リビング

「リビングは広く!」はよくお聞きするんですが、「広さは丁度いい感じ」とのご要望はとても珍しく感じました。

でも、それってすごく大事というか・・・。
というのも、リビングのご要望で次に出てくるのが「落ち着いた感じ」と言うこと。
「リビングは広く」と「落ち着いた感じ」は、ある意味では相反する部分を秘めています。
色々実現させる方法はあって、それぞれのお施主様のご要望の潜在的な部分を探ればきっと矛盾したご要望もカタチへ落とし込むことは不可能ではないと思います。

「丁度いい感じの広さ」

これは深いですね。
ドキッとします。なぜなら、お施主様のイメージの中に「丁度いい」という定量感があるってことでしょ。

お施主様はこうも表現してくれました。

「からだがすっぽりとおさまる感じ」

何となくイメージが出来ました。
部屋の隅が落ち着いたり、押入れの中が落ち着いたり・・・。
そんなイメージでしょうか?

家族が傍にいる感じ。
壁にもたれかかれる距離。

こんなことを念頭において「こじんまりと居心地がいい」に挑戦しました。

ちょっとした違い

ちょっとした違い床から微妙に浮いて存在する和室の箱。

和室の箱として見えるのは、目地がある為。

目地は水平面と垂直面との間に影をつくり、面が変わるメリハリを与えている。

先日ココで書いた「取り合い」の例でもある。

目地を設けるのは手間がかかる。

手間がかかるわりには見た目に派手ではない。

むしろ気付かれないもの。
気付かれる必要の無いもの。

でも、その気付かないことの積み重ねで、(個人差があるにしても)無意識のうちに違いを受信しているものだ。

ひとつひとつを取り上げると、手間がかかる割には地味なこと。
そんなことを少しずつアイデアと手間とコストと時間をかけて積み重ねる。

地味なことを積み重ねるのには、多くの人の理解と多くの人の技と多くの人の忍耐などが必要だ。
華やかさが無いからねぇ~。
でも、ほとんどのことは地味なことの積み重ねによって生まれてくるんだと思う。
誰にでも解りやす過ぎることは、フェイクが効いていることが多いと感じる。

大切なことは地味なことをコツコツ積み重ねること。
選択を信じ、コツコツみんなでカタチにする。

ちょっとした違いって、そうやってやっと得れるものだといつも感じる。