暮らしをリアルに感じるプランニングのために。
〜設備と生活、そして五感でつくる家〜
昨日は、家づくりの未来を実感するような、とても濃密で、充実した一日でした。
PanasonicリビングフェアとTOTOショールームを訪ね、お施主様たちとともに設備や暮らしについて深く触れたあと、ご自宅や我が家(遊び心の家)を舞台に、五感を使って「これからの暮らし」をつくっていく打合せを行いました。
家づくりにおいて「設備を選ぶ」という作業は、単なる仕様決めではなく、これから先の暮らし方を一緒に想像し、共有していくための、とても大切なプロセスです。
暮らし方が日々変化する今だからこそ、モノやスペックだけでなく、感覚や価値観を丁寧にすり合わせていくことが、満足度の高い住まいづくりに繋がるのだと、あらためて実感しました。
Panasonicリビングフェアで見た、進化と配慮
Panasonicリビングフェアは、福井県産業会館という大きなホールを貸し切って行われる、北陸最大級とも言われるイベントです。
パナソニックグループが持つ多種多様な住宅設備を一挙に紹介する場であり、今回は本当に久しぶりに参加してきました。
照明からキッチン、建材、エネルギー機器に至るまで、パナソニックの製品だけで家が一軒建つと言っても過言ではないほどのラインナップが並び、最新の技術と日本らしい配慮に触れることができました。
その中で、個人的にとても印象に残ったのが「フロントオープンの食器洗い乾燥機」。
ミーレやボッシュ、ガゲナウといった海外製ともまた違う、日本人の繊細な感覚に寄り添った設計が随所に感じられました。
和食、中華、洋食……バリエーション豊かな食文化に対応し、食器の置き方にも細かな気配りがあり、まさに「日本の暮らしに合うようにつくられた製品」だと感じました。
単なる“機能”ではなく“感性”にも届く製品に触れることで、住まいの中で設備が果たす役割の深さを再認識する機会となりました。
TOTOショールームで感じた「思想」と「日常への眼差し」
Panasonicリビングフェアの熱気を感じたあと、午後からはTOTOショールームへ。
ここでは、パナソニックとはまた違った、より“思想的な深み”を感じるひとときとなりました。
TOTOの製品は、単に性能が良いということにとどまらず、「人のふるまいや感覚にどう寄り添うか」という、暮らしの本質を捉える視点から設計されているのだと感じます。
トイレ、洗面、ユニットバスといった“生活の奥まった場所”に対するまなざしはとても繊細で、それらが当たり前に快適であることの価値を、あらためて教えてくれました。
ただ、正直に言えば、Panasonicリビングフェアからの流れで訪れたTOTOショールームには、どこか「規模感の違い」も感じました。
賑わいの熱気と演出の豪華さに満ちたパナソニックの展示から一転、TOTOの場は静謐で、丁寧だけれども“やや控えめ”。
設備の新しさという意味では、目新しさよりも「深められた定番」を見ているような感覚がありました。
それはある意味で、企業姿勢の違いによるものかもしれません。
TOTOは「ウォシュレット」「ユニットバス」「イオン除菌水」など、業界を動かす発明をしてきた会社。
そして特徴的なのは、「エンドユーザーを顧客とした思想」です。
リトルベンとビッグベンなど、テレビCMの打ち方に見られるように、大衆に響くメッセージを届ける力に長けていて、暮らし手との距離がとても近い。
一方で、パナソニックは流通業者、建設業者、そして設計者など、多くのプレイヤーの協働によって「顧客満足」を実現しようとする姿勢。
そのことが、あの大規模なリビングフェアという形にも現れていたように思います。
どちらが良いという話ではありません。
ただ、現場にいると、ふとそんな資本の差や戦略の違いを感じたり、
「やっぱり大資本が勝つのか…?」なんて、ちょっとセンチメンタルになってしまったり(笑)
(仮称)大宮2の家のお施主様も、トイレ設備についてじっくりご覧になっていた様子でした。
設備を“選ぶ”というより、“暮らしをどう支えるか”という視点で、しっかりと考えられているのだなと、こちらも身が引き締まりました。
余談ですが、荻上直子監督の映画“トイレット”は、とても大好きな映画です(笑)。
オススメです。ぜひご覧くださいませ!
プランの精度を高めるために、お施主様のご自宅へ
TOTOショールームを後にして、その足で(仮称)大宮2の家のお施主様のご自宅に伺いました。
ご自宅を見せていただけるというのは、プランニングを行う上で本当にありがたいことです。
というのも、現在の暮らしを五感で感じることができるから。
そして、その方にとっての「広さ」や「高さ」、「明るさ」など、住まいにまつわるあらゆる“ものさし”を知ることにつながるのです。
例えば、「玄関は広いほうがいい」という希望があったとしても、
何を基準に“広い”と感じているのかが分からないと、その言葉はすれ違ってしまいます。
基準が二条城なのか(笑)、遊び心の家なのかで、イメージはまったく変わってきますよね。
だからこそ、「今の暮らし」がどういう基準でできているのかを知ることは、とても大切。
見せていただけることは、私たちにとって本当にありがたいことなんです。
もちろん、ご事情があってご自宅を見せていただけない場合でも、
エクリュでは「現在のお住まいや暮らし」を丁寧にヒアリングするツールをご用意しています。
暮らしの輪郭を、なるべく“その方の感覚”に沿って描けるように、私たちも工夫を重ねています。
プランをより深めるために、遊び心の家へ
この日最後の打合せは、我が家「遊び心の家」へと場所を移して行いました。
現在の住まいは、昔と比べて断熱性や設備の性能が格段に向上していたり、自然環境の変化によって生活様式そのものが変化しています。
けれど、こればかりはなかなか言葉だけでは伝わらない。だからこそ「体感していただく」という機会は、とても重要だと考えています。
例えば、花粉の飛散が多いこの季節。かつては2階のベランダまで濡れた洗濯物を持って上がって干すのが当たり前でしたが、
今は外干ししないご家庭も増え、住まいに求められる洗濯動線や空間の役割も大きく変わっています。
また、冬の寒さに凍えながらこたつで暖をとり、CMの間にトイレへダッシュして震える――
そんな経験は、全館冷暖房の今ではまずありません。廊下も居室と同じ温熱環境になることで、
移動のためのスペースから「過ごす空間」へと意味が変わってきています。
こうした「言葉では伝わりにくいこと」を実際に見て・歩いて・感じていただくために、
我が家に移動して、打合せの続きを行いました。
この日は「洗濯動線」について。
我が家の洗濯動線は決して短くありません。でも、片付きやすく、急な来客があっても慌てることのない工夫が随所に施されています。
お施主様は、リビングと洗濯室、そして脱衣室にWIC(ウォークインクローゼット)を何度も行ったり来たりされながら、動作をシミュレーション。
その一つひとつの動きが、プランに対する納得度を高めていくのが伝わってきました。
何度も確認され、ようやく「これだ」と感じていただけたその表情を見て、こちらもとても嬉しく思いました。
暮らしは「図面」では語りきれません。
実際に使いながら、住まいの中でどう動き、どう感じるか――それを一緒に確認しながら、丁寧にプランを深めていく時間となりました。
次回は、水曜日。
また我が家に集合して、今度は「食事にまつわる家事動線」をテーマに打合せを行う予定です。
こうして少しずつ、でも確かな手応えを持って、ご家族のための住まいが形になっていきます。
まとめ:間取りではなく、“動き”と“空間(体積)”で暮らしを描く
「家の設計」と言うと、よく「間取り」という言葉が使われますが、
エクリュではその言葉は少ししっくりきません。
なぜなら、私たちが考える住まいづくりは、“図面”のためではなく、“暮らし”のためのものだからです。
実際の暮らしは、「平面」ではなく「空間」によって構成され、
そこにある“動き”――洗濯する、料理する、寛ぐ、整える――といった、日々のふるまいが空間の本質を決めていきます。
昨日の遊び心の家での打合せでも、お施主様は「間取り」を意識されることはほとんどありませんでした。
意識されていたのは、日常の動きと空間との関係。
ご自身の洗濯の動線と、実際の空間を照らし合わせながら、何度も何度もシミュレーションを重ねていらっしゃいました。
“間取り”は、その体験の結果に過ぎません。
エクリュが大切にしているのは、図面の美しさではなく、そこで育まれるウェルビーイングな暮らし。
自分らしく、快適に、そして心地よく暮らすための住まいを、丁寧に一緒に考えていきたいと思っています。
その入口として、まずは家づくり相談会で、ぜひあなたの暮らしについて聞かせてください。
言葉だけでは伝えきれないこと、体験していただくからこそ見えてくることが、きっとあります。
▶︎https://www.ecru-arc.co.jp/blog/information/seminar01-2