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若狭塗箸を選ぶ|「良い」より「必要」を探す暮らし

食卓に一本の線を加えるために

 
この週末は、時間ができたので小浜へ行って来ました。

と言うのも、最近、我が家のテーブルウェアが少し重たい雰囲気になってきたことが気になっていて、
どうすれば良いのかを、ずっと頭の片隅で考えていたからです。

我が家の夕食どきのテーブルウェア

器は、陶芸まつりなどで少しずつ集めてきました。

土モノが多く、
また勢いのある作品が好きなのか、
気が付けば食卓全体に民藝色が強くなっていました。

それはそれで好きなのですが、
どこか重たさも感じます。

もう少し緊張感を。

もう少しシャープさを。

そんなことを考えながら、
空いた時間でネットサーフィンをしていた時、
ふと思いついたのが「箸」でした。

箸は、面ではなく線。

だからこそ、
食卓に緊張感や軽やかさを加えられるのではないかと思ったのです。

そこで、

「そうだ!小浜に行こう!」

と思い立ちました。

小浜は、日本の塗箸の約8割を生産するまち。

県内にそんな場所があるのだから、
行かない理由はありません。


若狭塗箸を知る

 
僕はいつも、
工芸品を購入する前に、
できるだけその背景を知ろうとします。

博物館や美術館へ行き、
その工芸品の歴史を知り、
頂点となる作品を見て、
理解を深めるようにしています。

小浜では、
美術館や博物館を見つけることはできませんでしたが、

箸のふるさと館WAKASA

という施設で、
若狭塗箸について学ぶことができました。

知れば知るほど、
高価な箸の魅力が見えてきます。

結果として、

「欲しい!」

と思った箸は、
二万円を超えるものでした。

しかし、
改めて考えます。

今回、
なぜ箸を探しに来たのか。

目的は、
若狭塗箸を所有することではありません。

我が家のテーブルウェア全体のバランスを整えることです。

何度も何度もイメージを重ね、
最終的に選んだのは、
その七分の一ほどの価格の箸でした。

購入した若狭塗箸


箸は命の結界

 
箸には、
食卓における「命の結界」という意味があると聞いたことがあります。

海外では、
ナイフやフォーク、スジョは縦方向に置かれることが一般的ですが、

日本では、
箸を横方向に置きます。

命を奪い、
命をいただき、
命を維持する。

食する前に、
その境界を示すもの。

それが箸なのだそうです。

そう考えると、
食卓に箸を置くという行為が、
少し凛としたものに感じられます。

今回の若狭塗箸によって、
我が家の食卓にも、
ほど良い緊張感が加わりました。

妻の若狭塗箸


知ることと、選ぶこと

 
今回の箸の選び方は、
住まいづくりにも通じるところがあります。

先ずは、
選択肢を知ること。

そして、
それぞれが持つ効果を知ること。

知れば知るほど、
より性能の高いモノや、
より魅力的なモノが欲しくなります。

漠然としていた「良い」が、
理由を持った「良い」へと変わって行くからです。

しかし、
そこで終わりではありません。

次に必要なのは、
自分の中の「必要」を見つけることです。

今回、
僕が求めていたのは、
高級の若狭塗箸ではありませんでした。

民藝色が強くなった食卓に、
少しだけ静寂(しじま)を加えること。

土モノの力強さの中に、
一本の線のような緊張感を与えること。

その役割として、
今回の若狭塗箸が最も相応しいと感じたのです。

高価なモノが、
必ずしも最適なモノとは限りません。

知れば知るほど、
選択は難しくなります。

けれど、

「自分は何を得たいのか」

が明確になると、
不思議と目が泳がなくなります。

今回の目的は、
若狭塗箸を手に入れることではありませんでした。

我が家の食卓に、
少しだけ凛とした空気を加えること。

その目的に対して、
最も効果の高い選択が、
今回の若狭塗箸だったのです。

住まいづくりも同じです。

性能を知る。

設備を知る。

効果を知る。

その上で、

「何が良いか」

ではなく、

「自分たちには何が必要なのか」

を見つけていく。

それが、
暮らしを整えるということなのかもしれません。