肩の力が抜けた時に残るもの
肩の力を抜け!

子供の頃、
父とキャッチボールをしていた時、
よく言われた言葉があります。
「肩の力を抜け!」
不思議なもので、
力いっぱい投げようとするほど、
ボールは走りません。
むしろ、
余計な力が抜けた時の方が、
球に力が伝わるのです。
先日、
その言葉を思い出していました。
ずっと考えていること
最近、
正確なニーズの引き出し方について、
あらためて考えていました。
いや、
最近というより、
ずっと考え続けていることです。
住まいづくりの打合せでは、
ご夫婦の意見が割れることが珍しくありません。
それは決して悪いことではなく、
むしろ自然なことです。
なぜなら、
異なる意見が出てくるということは、
まだ多くの可能性が残されているということだからです。
一方で、
感情が大きく動き過ぎることは望ましくありません。
感情は時として、
判断を歪めることがあるからです。
だからこそ僕は、
どうすればご夫婦が揉めることなく、
より正確なニーズへ辿り着けるのだろう。
そんなことを、
ずっと考えていたのです。
迷いの正体
住まいづくりが始まると、
誰もがたくさんの情報に囲まれます。
SNS。
住宅雑誌。
住宅会社。
友人や知人。
時には専門家ではない人の意見にさえ、
影響を受けることがあります。
それはきっと、
無駄に力が入っているからです。
- 失敗したくない
- 損したくない
- 得したい
- オシャレだと思われたい
- 軽視されたくない
そんな思いを抱えながら、
住まいづくりに向き合います。
すると、
自分以外の声が大きくなり過ぎてしまう。
本当は一番大切なはずの、
自分自身の声が聞こえにくくなるのです。
それが、
迷いや悩みの正体の一つなのかもしれません。
だから迷うことには意味がある
しかし、
迷うことは悪いことではありません。
むしろ、
とても意味のある時間です。
なぜなら、
迷いながら、
比較しながら、
検討しながら、
少しずつ余計なものが削ぎ落とされていくからです。
- 見栄が落ちる
- 他人の評価が落ちる
- 流行が落ちる
- 住宅会社への遠慮も落ちる
そうして最後に、
「私たちは、これが好きなんだよね」
が残る。
それは、
熱狂ではありません。
執着でもありません。
むしろ、
脱力した状態で残るもの。
それが、
ニーズなのかもしれません。
ニーズとは何か
ニーズとは、
何かを変えるものでもなく、
何かを差し出すものでもなく、
もっと静かで、
もっと自然なものなのだと思います。
ニーズとは、
最後まで残ったもの。
そして、
最後まで残ったものとは、
余計な力が抜けた時にも、
なお残っているものです。
だからニーズには、
無理がありません。
- 頑張っていない
- 演じていない
- やらされていない
- 気負っていない
ただ自然に、
そこにある。
だからこそ、
続くのです。
ウェルビーイングが続く理由
僕は、
ウェルビーイングな住まいとは、
性能が高い住まいでも、
流行の住まいでも、
誰かに評価される住まいとも少し違うと思っています。
住まい手にとって、
無理のない住まい。
住まい手のニーズで構成された住まい。
だから、
頑張らなくても続く。
演じなくても続く。
そして、
ウェルビーイングもまた続いていくのです。
だから僕は、
ご夫婦が迷われることを、
決して悪いことだとは思っていません。
むしろ必要な時間だと思っています。
迷いながら、
削ぎ落としながら、
少しずつ、
自分たちの本当の声が聞こえるようになっていく。
その過程こそが、
住まいづくりの大切な時間なのだと思います。
父の言葉
子供の頃、
父が言っていた
「肩の力を抜け!」
という言葉。
あれは、
キャッチボールだけの話ではなかったのかもしれません。