住まいを整える前に、ヒトとモノとの関係性を整える。
ヒトとモノとの関係性

僕が大学を卒業して最初に勤めた会社は、
芦屋のマンションディベロッパーでした。
芦屋と言えば、
言わずと知れた高級住宅街です。
子どもの頃、
その会社のマンションに住んでいる友達は、
「お金持ちなんだ。」
そんな憧れを抱いていました。
だからこそ、
その会社へ入社できたことは本当に嬉しかったのです。
ところが、
お施主様のお住まいを拝見して、
僕は少しショックを受けました。
勝手な想像ですが、
「豊かな暮らし=整った暮らし」
だと思っていたからです。
もちろん、
すべてのお宅ではありません。
しかし、
あるお住まいでは、
僕が想像していた暮らしとは違う景色が広がっていました。
価値が変わると関係性も変わる
裕福な方にとっては、
僕らから見れば高価な家具も、
日用品なのかもしれません。
たとえば、
arflex(アルフレックス)の椅子。
Cassina(カッシーナ)のソファー。
僕らなら、
思い切って購入した日には、
嬉しくて、
座るたびに眺めてしまうでしょう。
肘掛けを、
ついスリスリ撫でてしまうかもしれません。
でも、
毎日当たり前にそこにある人にとっては、
パイプ椅子と同じような存在なのかもしれません。
実際、
マレンコが洗濯物置きになっている光景を見た時、
僕は少なからず衝撃を受けました。

でも今思えば、
家具が悪いのでも、
人が悪いのでもありません。
僕が驚いたのは、
ヒトとモノとの関係性
だったのです。
散らかる原因は、モノの数ではない
もう一つ印象に残ったことがあります。
それは、
モノの多さでした。
もちろん、
裕福な方が皆さんそうだと言いたいわけではありません。
でも、
たまたま僕がお伺いしたお住まいには、
良いモノがたくさんありました。
けれど、
その一つひとつが、
大切に扱われているようには見えませんでした。
その時、
僕は初めて考えます。
「住まいが整うかどうかは、収納量ではなく、ヒトとモノとの関係性なのではないか?」
ここが、
エクリュの原点の一つになっています。
これは誰にでも起こること
でも、
これは決して裕福な方だけの話ではありません。
たとえば、
思い切って買った
ジョルジオ・アルマーニのジャケット。
高かったから、
なんとなく捨てられない。
もう何年も着ていないのに、
ウォークインクローゼットの奥で眠っている。
こんな経験はありませんか。
僕もあります。
大切にしているつもりでも、
着ることもなく、
誰にも見られることもなく、
ただ場所だけを占めている。
それは、
良好な関係性と言えるでしょうか。
服は、
着られてこそ価値があります。
家具も、
使われてこそ価値があります。
器も、
料理が盛られてこそ美しい。
つまり、
モノは使われることで命を持つ
のだと思うのです。

空間は心を映す
実質的な価値ではなく、
「高かったから。」
「もったいないから。」
そんな理由だけで残されたモノは、
少しずつ空間に澱みをつくります。
そして、
その澱みは、
やがて考え方や心の澱みにもつながっていく。
僕は、
そんな住まいをたくさん見てきました。
だからエクリュでは、
収納の話より先に、
ヒトとモノとの関係性
を大切にしています。
住まいを整えるということ
住まいを整えるとは、
モノを減らすことではありません。
高価なモノを持つことでもありません。
大切なのは、
自分にとって必要なモノと、
良好な関係を築くこと。
そして、
その関係性が、
住まいを整え、
暮らしを整え、
やがて、
考え方や心まで整えてくれる。
そんな
「ヒトとモノとの良好な関係性」
を育てることから始まります。
