なぜ日本の企業は続くのに、住まいは続かないのだろう?
なぜ日本の企業は続くのに、住まいは続かないのだろう?

日本は、世界でも稀に見る長寿企業大国です。
帝国データバンクによれば、2025年時点で、創業・設立から100年以上続く「老舗企業」は、日本国内に4万6,708社あります。
世界の100年以上続く企業の約4割を日本企業が占めるという調査もあり、日本はまさに、世界有数の「長く続く国」と言えるのかもしれません。
その象徴として、よく知られているのが金剛組です。
聖徳太子の命を受け、四天王寺の建立に携わったとされる金剛組は、1400年以上の歴史を持つ、世界最古級の企業として知られています。
ほかにも、山梨県の西山温泉 慶雲館や、京友禅の老舗・千總など、何百年という時間を超えて営みを受け継いできた企業があります。
なぜ、日本にはこれほど長く続く企業が多いのでしょうか。
もちろん、その理由は一つではありません。
地理的・歴史的な条件もあるでしょう。
けれど、
三方よしのように、商売を自分だけのものとせず、相手や社会との関係性を大切にする考え方。
家業や暖簾を守り、次の世代へ受け渡していくという考え方。
そして、
不易流行。
変えてはいけないものを守りながら、時代に合わせて変えるべきものは変えていく。
そんな「続けるための知恵」が、長い年月の中で育まれてきたのではないでしょうか。
もちろん、これは企業だけの話ではありません。
では、住まいはどうでしょうか。
日本には、これほど「続ける」ことを大切にしてきた文化がある。
それなのに、
住まいになると、理想としていた暮らしが、思いのほか早く続かなくなってしまう。
このことに、僕は少し不思議さを感じます。
もちろん、家は企業とは違う部分も色々あります。
暮らしには、家族の成長もあれば、仕事や人間関係の変化もあります。
だから、全く同じ尺度で比べることはできません。
それでも、
「家を建てた時に思い描いていた暮らしは、その後も続いているだろうか?」
そんな問いは、あってもいいのではないでしょうか。
「人を招ける家」というバロメータ
僕は、住まいにおける理想の暮らしの『継続』を考える時、一つの分かりやすいバロメータがあると思っています。
「その家に、いつでも人を招くことができますか?」
以前、kufuraが女性157人を対象に行った調査では、
「いつでも人を呼べる」と答えた人は、わずか17.2%でした。
一方で、
「到底、人を呼べない」
「人を呼びたくない」
という回答も合わせると、かなりの割合(46.5%)に上ります。
「人を呼べるかどうか」だけで、暮らしの良し悪しを判断することはできません。
それでも僕は、この数字を見た時、
「理想の暮らしを、建てた後も続けられている人は、どれくらいいるのだろう?」
と考えてしまいます。
日本だけが、少し違って見える
海外に目を向けると、また違った景色が見えてきます。
GfK(現NIQ)が17カ国を対象に行った「客を家に招く頻度」の調査では、世界平均で約4人に1人が、毎日または毎週、友人を家に招いて楽しんでいるという結果があります。
一方、日本では、家に人を招くことが比較的少ない傾向が見られます。
メキシコやアルゼンチンなどでは、毎日または毎週、人を家に招く人が約半数に達するという結果もあります。
もちろん、文化や住宅事情、家族構成、住環境など、さまざまな違いがあります。
日本には「おもてなし」という言葉がある一方で、
「人を家に招く」ということには、どこか高いハードルを感じる。
そんな文化もあるのかもしれません。
それだけで、説明できるだろうか。
僕は、ここで答えを出したいわけではありません。
むしろ、
「なぜなんだろう?」
と、一緒に考えてみたいのです。
日本には、何百年、何千年という時間を超えて、
「これは残していこう」
「これは次の世代へ渡していこう」
と、営みを続けてきた人たちがいます。
そこには、技術だけではなく、
考え方があり、
関係性があり、
守るものがあり、
変えるものがあり、
そして、長い時間をかけて積み重ねてきた「想い」があります。
それなのに、
住まいではどうでしょう。
家を建てる時には、
「こんな暮らしがしたい」
「こんな毎日を送りたい」
「こんな家族でありたい」
と、たくさんの想いを込める。
けれど、その想いは、
10年後も、
20年後も、
その先も、
暮らしの中に残っているでしょうか。
僕は、その違いがどこから生まれるのかを、ずっと考えています。
そして、その答えを簡単に一つに決めてしまいたくもありません。
なぜなら、
「続く」ということは、建物だけの問題ではない
と思うからです。
エクリュが考えている「続く住まい」
エクリュが住まいづくりで大切にしているのは、
理想の暮らしが継続されること。
そして、
ウェルビーイングが続いていくこと。
です。
だから、僕たちは「家を建てること」だけを目的にはしていません。
建物の性能や素材、間取りを考えることはもちろん大切です。
けれど、それだけではなく、
その家で、どんな暮らしを続けていきたいのか。
そこから住まいを考えています。
長寿企業が、長い年月の中で変えるものと変えないものを見極めながら営みを続けてきたように。
住まいにも、
「変わっていくもの」と、
「変わらず大切にしたいもの」
があるのではないでしょうか。
住まいづくりとは、
家を完成させることではなく、理想の暮らしを続けていくための環境をつくること。
僕は、そう考えています。
そして、
「どうすれば、理想の暮らしは続いていくのだろう?」
その問いを、エクリュはこれからも考え続けていきます。