好きな家を、好きであり続けるために。そとん壁の維持管理を考える
家は、建てて終わりではない

本格的に、外壁の左官工事が始まりました。
今回、外壁の仕上げに採用したのは、そとん壁です。
そとん壁は、火山由来の素材を用いた塗り壁です。
左官職人さんが、現場の状況を見ながら段取りを考え、一つひとつ仕上げていきます。
先日から始まった工事が、これから少しずつ、この家の外観をつくっていきます。

外壁は、建てた後にも維持管理が必要になる
家を建てる時、外壁について考えると、普通は完成した時の姿を想像します。
どんな色にするか。
どんな質感にするか。
どんな素材を使うか。
そして、家の正面から見た時に、どんな印象になるか。
いわゆるファサードです。
もちろん、それはとても大切なことです。
毎日暮らす家ですから、自分たちが好きだと思える外観であることは、暮らしの満足にもつながります。
ただ、外壁を選ぶ時には、もうひとつ考えておきたいことがあります。
それは、
その外壁を、これからどう維持していくのか。
ということです。
外壁は、建てた瞬間に役割を終えるものではありません。
そこから何十年もの間、雨や風、日差しを受けながら、住まいの一部としてあり続けます。
そして、必要に応じて維持管理をしていくことになります。
サビサビのフェラーリに乗っている人はいない
少し話は変わりますが、僕はイタ車が好きです。
幼稚園児の頃から、イタ車に憧れていました。
そして四半世紀、アルファ・ロメオに乗っています。
車も、購入して終わりではありません。
車検があります。
定期的なメンテナンスも必要です。
消耗品も交換しなければなりません。
時には?結構?故障することもあります。
それでも、好きだから乗る。
僕はそうしています。
でも、ここで考えてみると、
サビサビのフェラーリに乗っている人はいない。
と思うのです。
フェラーリを選ぶ人は、フェラーリの姿や雰囲気も含めて、その車を好きなのだと思います。
だから、当然、サビる前に維持管理する。
塗装が傷めばすぐに直す。
調子が悪くなればすぐに整備する。
その車を好きであり続けるために、必要なことをする。
それは、フェラーリを所有するための負担というより、
フェラーリとの関係を続けていくために必要なこと
なのだと思います。
住まいも、少し似ているように思います。
「雰囲気」を選ぶなら、その先も考える
たとえば、そとん壁を選ぶ。
その理由が、
素材の質感だったり、
左官の表情だったり、
経年変化だったり、
その家ならではの佇まいだったり。
そうした雰囲気であることは、少なくないと思います。
もちろん、環境負荷や機能的な理由もあるでしょう。
しかし、住まいをつくる時に、
「この雰囲気が好きだ。」
という気持ちは、とても大切です。
好きなものに囲まれて暮らすことは、理想の暮らしの一部だからです。
ただし、その「好き」は、家が完成した瞬間に固定されるものではありません。
時間が経てば、外壁は汚れます。
素材は変化します。
傷むこともあります。
その時、
「この雰囲気が好きだから、これからも維持したい。」
と思えるのか。
そして、
そのために必要な手間や費用、技術、人との関係を、これからも続けていけるのか。
そこまで考えておく必要があります。
維持できない「好き」は、やがて負担になる
「好きだから選ぶ。」
それは、とても自然なことです。
しかし、
好きなものを選ぶことと、好きなものと暮らし続けられることは、同じではありません。
たとえば、
掃除をしても成果が分かりにくい。
手入れの方法が分からない。
特別な技術が必要になる。
施工できる職人さんが人間国宝級。
その人がいなくなったら、誰に頼めばいいのか分からない。
想像以上に費用がかかる。
あるいは、住む人自身がかなりの時間と手間をかけなければならない。
そうしたことが、後から分かることがあります。
その結果、
好きだったはずの家を維持することが、苦痛になってしまう。
そんなことも起こり得ます。
そうなれば、家は暮らしを支えるものではなくなります。
むしろ、
「この家を維持するために暮らしている。」
という状態になってしまうかもしれません。
それは、僕が避けたいことです。
建築費だけではなく、暮らしの中で考える
家づくりでは、どうしても建築時の費用に目が向きます。
当然のことです。
家を建てるには、大きなお金が必要になります。
だからこそ、
「できるだけ良いものを選びたい。」
「できるだけ理想に近づけたい。」
そう考えるのは自然なことだと思います。
ただ、住まいは建てた瞬間に終わるものではありません。
その後、何十年も暮らし続けていくものです。
住宅ローンを支払いながら、子どもが成長し、教育費が必要になり、忙しくもなります。
車を買い替え、家族の暮らしも変化していきます。
その中で、外壁や屋根、設備などの維持管理も必要になります。
つまり、
建てる時に払えるかどうかだけでは、住まいのコストは分かりません。
建てた後も、
「この暮らしを続けていけるか。」
を考える必要があります。
そして、それはお金だけの話ではありません。
時間の問題かもしれません。
手間の問題かもしれません。
技術の問題かもしれません。
あるいは、将来も頼れる人がいるかという、人の問題かもしれません。
「欲しい」と「必要」は、少し違う
家づくりでは、欲しいものがたくさんあります。
美しい外壁。
大きな窓。
広いキッチン。
憧れの設備。
好きな素材。
それらは、暮らしを豊かにしてくれるものです。
だから、
「欲しい。」
と思うことは、決して悪いことではありません。
むしろ、理想の暮らしを考える上で、とても大切なことだと思います。
ただ、
「欲しい」ことと、「自分にとって必要である」ことは、少し違います。
たとえば、
「そとん壁が欲しい。」
と思ったとします。
そこで終わらず、
なぜ、そとん壁が欲しいのか。
その外壁の何に惹かれているのか。
その外壁によって、どんな暮らしを実現したいのか。
そして、
その雰囲気を維持するために、これから何が必要になるのか。
そこまで考えてみる。
そうすると、
「欲しい。」
という気持ちの中から、
「自分の暮らしにとって、本当に必要なものは何か。」
が見えてくることがあります。
Wantsを否定するのではなく、
Wantsを深く見つめることで、
Needsに近づいていく。
それが、エクリュの住まいづくりの考え方のひとつです。
(仮称)松岡観音の家が、そとん壁を選んだ理由
(仮称)松岡観音の家では、外壁にそとん壁を採用しました。
もちろん、そとん壁にも維持管理は必要です。
どんな外壁であっても、永遠に何もしなくてよいということはありません。
だからこそ、重要なのは、
「維持管理が必要か、必要でないか。」
という単純な話ではないのだと思います。
大切なのは、
その維持管理も含めて、自分たちの暮らしに合っているか。
ということです。
(仮称)松岡観音の家では、建築時の費用だけではなく、将来の維持管理についても考えました。
窯業サイディングやジョリパット仕上げ、ガルバリウム鋼板。
様々な外壁材の費用対効果も検討されました。
その上で、そとん壁を選ばれました。
「高いから良い。」
「安いから良い。」
という話ではありません。
その家族にとって、
何を大切にしたいのか。
何を好きであり続けたいのか。
そして、そのために何が必要なのか。
それらを考えた上で、
理想の暮らしが続いていくための選択として、そとん壁が選ばれた。
ということです。
家は、完成した時から始まる
今日から、本格的な左官工事が始まりました。
これから、職人さんの手によって、少しずつ外壁が仕上がっていきます。
家が完成する日が、少しずつ近づいていきます。
しかし、僕は、家が完成した日が終わりだとは思っていません。
むしろ、
そこから暮らしが始まります。
暮らしが始まれば、住まいとの関係も始まります。
そして、その関係を続けていくために、維持管理も始まります。
だからこそ、家を建てる時には、
「どんな家を建てたいか?」
だけではなく、
「この家で、どんな暮らしを続けていきたいか?」
を考える必要があるのだと思います。
家は、建てて終わりではありません。
その後の暮らしが続いていくこと。
そして、
理想の暮らしが、無理なく続いていくこと。
そのために、外壁を選ぶ。
そのために、家を建てる。
(仮称)松岡観音の家では、先日から、その外壁づくりが始まりました。
これから少しずつ仕上がっていく、そとん壁。
完成が楽しみです。
そして、この家とご家族の暮らしが、永く続いていくことを願っています。
