「おかげさま」

お施主様が大切にされていることのひとつが「おかげさま」という感覚だと思います。

正直、当時の自分には今の自分よりもずっとそういった感覚は薄く・・・
かなりお施主様から影響を受け、今ではとても大切に考えている考え方です。

「おかげさま」

デザインはカタチにする仕事です。
でも、デザインは何をカタチにしているのかと言うと、「想い」とか「考え方」とか、目には見えない何かをカタチにしています。
そんなことは学校でも教わり知っているつもりでしたが、まだまだ解っていなかったと感じます。

「家相」はそういった想いのひとつだと思います。
家族を大切に思う気持ちや、自分達のルーツや、神や、そんな目には映らないもの。
「おかげさま」につながる気持ち。

「つながりの家」で大切だったことは「家相」に象徴される「おかげさま」と言うことだったと思います。

仏間の位置やカタチなどに拘ったり、神奈川県の家相の先生と一緒に間取りを検討したり、工事の無事を祈って和歌山の高野山までお施主様自ら祈願に行っていただいたり、現場を毎週清めていただいたり・・・目に見えないものを大切にされるお施主様だったから、その大切な気持ちをカタチにしていく度、エクリュも気付かされることがあったと感じます。

カタチとは結果で、もちろんそれも大切なことですが、そこに込められた想いがあってのカタチでなくてはなりません。
それがデザインです。

「おかげさま」はデザインそのものの思想なのかも知れません。

おかげさま

カタチと色と

カタチと色と1

今日は穏景の家の外壁の色決めでした。

当然ですが、建物の外観(カタチ)はもう決まってて、ほぼ出来てます。
カタチから受ける印象があります。
今回のおうちは、シンプルな形状ですがインパクトがあるファサード(外観)です。

ファサードなどを意識して2階の床レベルからファサード側のテラスを400mm床レベルを上げました。
そうまでしてファサードを調整したので、カタチから受ける印象は模型などでお施主さまと一緒に検討しました。

カタチと色と2

そして今日は色決めを行いました。

ファサードを決めるときからずっと迷っていた選択がありました。
先ず、決まっていたことは、マテリアルは土壁の風合いであることでした。
ただ、迷っていたこととは、それだけ考えたファサードを邪魔しないように単色にするのか?それとも検討したファサードの立体感を強調するためにツートーン(2色)にするか?です。

単色とした時は、立体感の強調をテクスチャー(質感・仕上方)で表現しようと思っていました。
色を変えずに吹付けによる土壁調の表現と、コテ仕上げによる土壁調の表現の違いで立体感を表現しようと考えていました。

ツートーンの場合は色の持つ重量感の違いを極端に出すことでメリハリを付け、立体感を表現しようと考えていました。

どちらにしてもファサードの立体感を活かした色やテクスチャーがコンセプトでした。

カタチと色と3

迷いに迷って、結局ツートーンでいくことになりました。
それはファサードからくるもうひとつの要因が決め手となりました。
マテリアル(素材)がその要因です。

安穏の家

安穏の家外観

① 安穏(あんのん)
   心静かに落ち着いていること。 また、そのさま。

② unknown(アンノウン)
   知られていないもの。 まだ解明されていないさま。

包容の家

包容の家このお家で言う「包容」とは、
先ずその棟配置になります。

広いパティオ(中庭)を囲んで配置された建物は、内部からの大きな開放感とプライベート性という相反するNEEDS(ご要望)を実現しています。

また次の意味としては、
気密性能や断熱性能など、各種の性能が非常に高い水準で実現されているところ。
また、それぞれの性能が絶妙にバランスされていて首尾一貫していること。

その高い性能を有した建物が住まう方の暮らしを暖かく見守る姿を「包容」と表現しました。

その他にも様々な意味が込められた「包容の家」。

安穏な光とは? 安穏な灯りとは?

安穏の家_図1

「安穏な空間」 その実現に「光」はとても重要な役割を果たしています。

そもそも「光」とは「影」の中にのみ存在しえます。
光と影の関係を考え、安穏を検討しました。

明暗の差が激しい場合から受ける印象は以下のような言葉で表現できます。

・ 明るい(暗い)
・ ビビッドな感じがする
・ 元気な感じがする
・ 緊張感がある
・ メリハリがある

などです。
それらの言葉は全て安穏に相反すると感じます。
安穏とはもっと緩やかな雰囲気の中あると感じ、光から影をグラデーションさせ、明暗の差を無くしました。

安穏の家_図2

直進性のある光は影を生みます。
つまり明るく感じます。

そうでなく影をグラデーションさせる為には、光を乱反射させる必要があります。
また、光を受け止める面も一定方向では無く、色々な方向を向いていたほうが影がハッキリしません。
そこで、素材はマットなテクスチャーのものを選択しました。

また、太陽光を直接部屋へ入れるのではなく、一度壁にあて間接的に部屋へ入れることで取入れる光を乱反射させました。

これらにより、光の表現を安穏に繋げていきました。

下の写真で、外にあるデッキチェアーの影に比べて、内部にあるセンターテーブルやイスの影がハッキリしていないことにお気付きになられますか?

これが光により狙った「安穏」の表現です。

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次ぎは灯りです。

リビングの灯りも同じように影をハッキリさせないようにと考えました。

但し、ダイニングやキッチンは影をハッキリさせるようにしました。
それは料理が美味しそうに見えるためです。
ダイニングの安穏な感じは色温度を2700K程度とすることにとどめ、料理を美味しく見せることを優先させました。

リビングに関してはコーニス照明により、壁からの反射光で部屋を照らすように照明計画をしました。

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建築の質

最も象徴的な出来事がありました。

エクリュのチラシなどをずっとお願いしている方(アートディレクター/グラフィックデザイナー)と「包容の家」のチラシについて打合せをしている時のことです。

ウッドデッキのお話をしていましたが、その方と話が食い違う点がありました。
グラフィックデザイナーの方はウッドデッキの仕上げはお施主様の選択通りイペ材で仕上げたと理解されたのですが、実はそうではなく、苦渋の選択でイペ材になったところが誤解の点でした。
(イペ材とは・・・南米産のハードウッドで、欧米では古くからボードウォーク・水辺デッキ・高級フローリング材として使用され、屋外でも30年以上もつと言われています。)

グラフィックデザイナーの方がお施主様が積極的にイペ材を選択されたと思われたのには、今までのエクリュのお客様の傾向は、メンテナンスがかかったとしても無垢材を選択されがちだったためです。

しかし、「包容の家」のお施主様はメンテナンスなどを考えると、本当はアルミ製の心材で木を模したものが第一希望でした。結果的には第二希望のイペ材となりました。

長期優良住宅や改正省エネ法など、最近一定の品質を示すための基準がつくられています。
低炭素住宅化が急務となっているからですが、それらの「質」のほとんどは機能性という建築の質のひとつに偏っていると感じます。

建築の質(品質)は5つの軸があると学生時代に教授から教わりました。
エクリュではその時に習ったとおりに5つの軸でお施主様のNEEDSを分析します。

5つの軸とは「社会性」「芸術性」「機能性」「経済性」「生産性」です。

「包容の家」は「機能性」が特に重要なファクターであったと思います。

棟配置は包容力のカタチ

「包容の家」は名前の語源ともなったその棟配置に最大の特徴があります。

先ほどお話したとおり、「機能性(性能)」はとても重要なファクターでした。
性能の中のひとつに機密性能があります(C値)。
C 値(相当隙間面積)とは、建物全体の総相当隙間面積を実質床面積で割ったもので、単位はc㎡/㎡で表されます。測定は実際に建てられた建物で気密測定機械 によって測定され、室内と外気の気圧差が9.8Pa(=1mmAq)時に、どれだけの空気が室内から外部に流出するのかを、住宅の床面積で割って算出しま す。

床面積に対して、外壁面積など表面積が増えてしまうコの字の棟配置は、当然にリスクが高くなります。

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上写真の積み木の表面積は、上部12+下部(床面積)12+側面14=合計38になります。

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それに対し上写真の積み木の表面積は、上部12+下部(床面積)12+側面26=合計50になり、最初のものからすると1.3倍以上の表面積になっています。
つまりリスクは1.3倍程度になります。

性能がとても重要なファクターである「包容の家」がコの字の棟配置を選択したのには、最も大切なことが棟配置にあるということだと思います。

この棟配置をご提案したのは、今回の敷地が東向きの土地だったことにあります。
一般的に今回の敷地に建物をレイアウトすると、きっと北側の隣地境界線に出来るだけ建物をよせて南側を広く空けます。
そうすることで、沢山光を取り込もうとします。
しかし、現在、南側の敷地は空地になっており、どんな建物が南側隣地に建つのかが解らず、プライベートを確保して且つリビングなどに沢山の光を落としこむにはコの字の棟配置が最適と思いご提案しました。

しかし、その意図は当然のこと、お施主様がコの字の棟配置を選択された理由はもっと他のところにあったのだと思います。

それは2世帯住宅であることに答えがありました。

お施主様には、家族がつながっていくニュアンスが、建物の中から感じ取れる必要性があったのだと思います。

打合せの時も、週末は2家族でご飯を食べるや姉夫婦が泊まりに来るなど、家族が集まるということをしきりに仰ってた印象があります。

家族が集まるイメージを、建物のイメージ(棟配置など)に表現できている必要性があったのだと思います。
家族を包み込む包容力のようなイメージです。

そのイメージを、真ん中のウッドデッキ(中庭)と和室(縁側風)で表現しました。
二家族が集まる場所です。

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カタチの意味

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天井が廊下をイメージさせています。
エリアを誘導しています。
しかし、スペースとしては全てLDに取り込まれており、広がりとして認識されます。

奥にあるFIX窓は跨ぎや垂れ壁があります。
あえてシンプルにしきらないことで、優しい雰囲気を出そうとしました。

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夜になると照明がよりエリア分けを明確にします。
天井の形状+灯りによるエリア(動線)の誘導をしています。

カタチには意味があり、意味からカタチになります。
おり上げ天井が欲しいとのご要望に、エクリュなりの意味を込めました。
そうしてカタチが生きてきます。

形状(ボリューム感)による暗示

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手前の壁の厚みは構造的に必要な壁圧ではなく、その空間に与えたい雰囲気に必要な厚みです。
安定感を出しています。

分厚い壁は空間に頼りがいのような雰囲気を与えてくれます。

奥の方に見えているキッチンカウンターも、柱・梁組みのアーチ型(ブラインドアーチ)になっているのも同様の意味があります。

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青空の切り取り方

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空を切り取って枠に納めるには、庇でつくるスカイラインはつや消しの黒っぽい方がいいです。

そうすればくっきり青空が切り取られます。

夕焼け空も綺麗に切り取れます。

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