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マテリアル(素材)の役割

マテリアル(素材)には色々な役割を持たせることが出来ます。
安穏の家では、マテリアルに様々な役割を持たせ、選択をしてます。

facade12例えば玄関ドアは、ミニマルなファサード(外観)とは一見似つかわしくないような印象的な素材感となっています。

これは無垢の木製ドアを釿(ちょうな)仕上げで仕上げたものです。

荒々しく民芸的なテイストを感じるのではないでしょうか?

どうしてミニマルなファサードに釿仕上げのドアとしたのか?
それはインテリアの方向性の暗示の役割を持たせたためです。


エクリュではプランニングをする際、同時にインテリアの方向性を検討していきます。
そうしないと理想の空間を計画することが不可能だからです。

安穏の家のインテリアの方向性は、冷たくはないが禁欲的な空間の中、形状はシンプルではあるがバリの家具を思わせるような手のぬくもりを感じるようなつくりの天板のダイニングテーブルなど、ミニマル&民芸と表現できそうな家具が配置されるのが、イメージでした。

ミニマルだけど荒々しさの中にある温かみを感じる家具が、冷たくはないが禁欲的な空間の中にレイアウトされている。
その雰囲気をファサードからも感じ取れるように釿仕上げのドアを選択しました。

マテリアルの役割 その1
インテリアの方向性の暗示

次の例はルーフテラスのウッドデッキ材であるイペ材に持たせた役割です。

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これはお施主様の顕在化したご要望でもあったのですが、ルーフテラスは「まさにウッドデッキ!」と感じるウッドデッキにして欲しいとのご要望がありました。

イペ材はよくウッドデッキなどに使われる材料です。
すごく硬い木で、風雨からの劣化が無垢材にしては遅く、マリーナ(ヨットハーバー)などで利用されることも多いほど耐候性に優れた材料です。

「まさにウッドデッキ!」とはその耐候性もさることながら、ご要望の真意は別にあったと理解しています。

それは「外である」ことの暗示です。

安穏の家は内外の繋がりを強調させることを意識し、壁の位置や開口部の位置などを決めています。
床も内外で同じ面にしているのは、内部空間が外部空間につながっていき、広がりを感じられる様に図ったためです。

内外の繋がりを強調するためには、床の材料も同じにした方が効果的です。

「安穏の家」という名前になったのは「心静かに落ち着いているさま」をコンセプトにしたお家だからです。
「落ち着く」この感覚を実現させるために色々なことをしていますが、そのひとつに「内部空間にいることを意識する」ということがあります。

「車の中が落ち着く」という人が結構います。
それは車が好きだと言うこともありますが、シートにすっぽり納まった感じやこじんまりとした空間が、外部に対して自分達の空間という意識が強くさせるからだと思います。
また、外が良く見えているところもミソです。

外を意識できないと内であることを認識できませんからね。

つまり「まさにウッドデッキ!」というのは「明らかに外」とすることで内部にいる意識を強調し、そこに「落ち着き」がうまれるからだと理解しました。

マテリアルの役割 その2
エリア分けの暗示

最後の例は最も一般的なもので、1階と2階の床仕上げ(タイル)の素材感の違いです。

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081101 (1)玄関を入って玄関土間やエントランスホールなどの床仕上げは鏡面のタイルを使用しています。

直射日光が入りやすい南側に窓があるエントランスホール。

鏡面の床タイルと直射日光は、2階にある安穏のリビングと相反して緊張感などを感じさせることを計画しました。

鏡面の床タイルは窓から取り入れた日光など光を反射させやすい性質があります。


living07それに対し、2階のLDKの床タイルの表面はマットな仕上りになっています。

また窓を北面に持ってくることで直射日光が入りにくいように計画しました。

北側にある白い壁に反射した日光は、乱反射し、マットな表面のタイルに吸収されていきます。

光がチカチカしないことで落ち着いた感じを計画しました。

マテリアルの違いで緊張と安穏を導き出し、また、対比によってそれらを相互に引き立たせました。


マテリアルの役割 その3
感覚の誘導