「ほっとする」の表現
「天開の家」のイメージは2階にあるLDKを出発点として設計されていきました。
真っ白でミニマル、そして開放感があるLDKを当初からお施主様(ご主人)がイメージされていた為です。
それに対して奥様は石でつくられた壁や濃い色調の空間、間接照明の淡い光など、重厚感や落ち着きのある空間を好まれていました。
そこで主寝室などは奥様の空間イメージをベースに「ほっとする」の表現を検討することにしました。
【エントランスホール】
「ほっとする」を表現するにあたり、どんな空間認識がほっとするのかを考えました。
・ 天井が低いこと
・ あまり明るくないこと
・ 隠れている雰囲気
・ 地面に近い
・ やわらかいことなど
緊張感のあるファサード(外観)からエントランスに入ると「ほっとする」を検討しました。
エントランスの土間はファサードの緊張感を引きずった鏡面仕上の白いタイルとなり、上り框はステンレスのヘアライン仕上のものを選択しました。
しかし、靴を脱いで上がるエントランスホールは、カーペット敷きとなっています。
靴を脱ぐという緊張からの開放と、やわらかい触感が「ほっとする」を引き出してくれると考えたからです。
光の取入れ方も階段の吹き抜けから光が降り注ぐ感じになるようにし、直射日光ではなく間接光としてエントランスホールを照らすように考えました。
それにより落ち着きのあるイメージを引き出そうとしました。
【マスターベッドルーム・主寝室】
階段下の収納の扉に見えるのが、主寝室の入り口です。
正面の天井目いっぱいまである扉は水廻りへの扉。
通常からして寝室と水廻りの扉の大きさが逆転していますが、隠れ家的な雰囲気を出す為にあえてそう選択しました。
天井の低いスペースを潜り抜けるとマスターベッドルームがあります。
まるで洞穴の奥に広がるスペースのような感じ。
それにより「ほっとする」を引き出せないかと思いました。
マスターベッドルームのスペースにはテラスが併設されています。
テラスのレベルはマスターベッドルームの床レベルより600程度高くなっています。
それにより少し地下にあるような感覚を引き出そうとしました。
また、このテラスは日光の取入れ方や照明計画など、光の取入れ方に工夫をしました。
日光は斜めの壁などに反射させ、直射では無く間接光として部屋に届くようにしました。
直射に比べて変化の少ない間接光は、「ほっとする」を与えてくれるはずです。
また、地下室のドライエリアの光の入り方にも似ている為、マスターベッドルームが地下にある錯覚を生み、それも「ほっとする」につながることを図りました。
マテリアル(素材)やテクスチャー(手触り)にも安定感ややわらかさなどのイメージを与えるものを選択。
そのことから「ほっとする」を引き出そうと考えました。
床仕上はカーペット敷きを選択しました。
壁の一部が石積み調の壁紙となっているのも、空間に重厚感や安定感を持たせたかった為です。
この壁紙、石積み調ということで、地下室っぽい演出にも一役かっています。