「安挺の家」になるまでの時間

「ここは、何のお店ですか?」
暖簾をくぐって、そう声をかけていただいたのが、
このお住まいのオーナー様ご夫婦との最初の出会いでした。
今から、8年ほど前のことです。

その問いは、
時々色んな方々にされるのですが、未だに僕らは、一言ではうまく答えられません。
「工務店ですが、ギャラリーや図書室があり、オーナー様(お施主様)専用のカフェもしています」
やっぱり、かなりわかりにくいですよね。
その日も、
ご夫婦たちは少し「?」という表情をされていたので、
コーヒーを飲んでいただきながら、
ゆっくりお話しをしました。
そこから、ギャラリーのイベントにお越しいただいたり、
お店のオープニング・パーティにお誘いいただいたり、
住まいのご相談をいただいたり、
オフィスのリフォームをご依頼いただいたりと、
時間をかけて、少しずつ関係が続いていきました。
そして、ある日。
「やっぱり新築で、家を建てようと思います」
そう言って、再びエクリュを訪ねてくださいました。

古い建築家の作品を購入してリノベーションすることも含め、
様々な選択肢を検討された上で、
機能性という観点から、新築という答えに至られたそうです。
だから「安挺の家」は、
華やかな見た目の中に、しっかりとした性能を備えています。
耐震性や断熱性といった基本性能はもちろん、
日々の家事を支える設備も、きちんと整えています。
(ふくいエコはぴねす住宅基準相当)
“安挺”という言葉には、
こうした見えない部分の安定も含まれています。

計画は、土地探しから始まりました。
エリアは、今の暮らしを大切にするため、かなり限定的。
その中で印象的だったのは、
「窓の外に、緑が見えることをあきらめない」という意思でした。
候補地に立ち、
2階の窓の高さにカメラを合わせて、景色を確認する。
そんなことも、一緒に行いました。
最終的に選ばれた敷地は、
決してすべてが理想通りではありません。
それでも、都市公園の緑を
和室やキッチンから感じられるように、
建物の形状や窓の配置を考えて実現しています。
プランニングの中で、
特に印象的だったことが、三つあります。
ひとつは、
家事や育児をご夫婦お二人ともが「主」として担っていること。
どちらかが補助ではなく、
お互いが主体である、という前提がありました。
このことは間取りにも影響が見られます。
ふたつ目は、
住まいを“内側からつくる”という考え方に、
とても自然に馴染まれていたことです。
どの家具を置くのか。
どんな絵を飾るのか。
その前提から空間を組み立てていく姿勢は、
とても本質的なものでした。
そして三つ目は、
奥様の「言語化の難しさ」でした。
図面では伝わらない。
言葉にもなりきらない。
でも確かに、そこにある“感覚”。
そこで一度、
僕の自宅に宿泊していただくことにしました。
普段とは違う環境で家事をしていただくことで、
日常の動きや違和感を、あえて浮かび上がらせるためです。
結果として、
ゴミの置き方や動線の細かな癖まで、
ひとつひとつご認識いただくことにつながって行きました。
エクリュでも、ここまで踏み込んだのは初めてのことです。

そうして積み重ねてきたものが、
「安挺の家」というカタチになっています。
内覧会では、
この家の“完成”を見ていただくというよりも、
ここに至るまでの時間や、
積み重なってきた選択の背景を、
少しでも感じていただけたらと思っています。
家は、すぐにできるものではありません。
けれど、
時間をかけた分だけ、
無理なく、自然に続いていくものになる。
すぐに答えが出る家づくりでは、ありません。
「安挺の家」は、 そんな住まいのひとつの在り方です。
なお、「安挺の家」は、
オーナー様のご厚意のもと、内覧会としてご覧いただけます。
写真や言葉ではお伝えしきれない、
温度や空気感、そして「時間の流れ方」を、ぜひ現地で体感してみてください。
ご見学は、ゆっくりとご覧いただくため、予約制とさせていただいております。
「何を建てるか」ではなく、
「どう在りたいか」から住まいを考えたい方にとって、
ひとつのきっかけになれば幸いです。
