空間を彩る「ヒカリ」のデザイン 〜照明計画のちょっと深い話〜
ヒカリを制するものは、空間を制する ― 見えない「気配」すら、照明計画でデザインできる
人が得る情報の約80%は「視覚」からのものだと言われています。
その視覚情報の源は、すべて“光(ヒカリ)の反射”です。
つまり、空間をどう見せるか・どう感じるかは、「窓の配置」や「照明の計画」に大きく左右されるのです。
今日は、その中でも「照明計画」について、少し深掘りしてみたいと思います。
点光源と面光源を使い分ける ―「陰影」がつくる立体感と温もりのコントラスト
まず知っておきたいのは、光(ヒカリ)のタイプの違いです。
- 点光源:直線的な光で、影がくっきり。物の輪郭や立体感が際立ちます。
- 面光源:光が拡散され、やわらかく、空間全体を包み込むような雰囲気に。温かみや落ち着きを感じさせます。
この2つを場面や用途に応じてうまく組み合わせることで、空間の表情を自在に操ることができます。

「正しく見える」ことの大切さ ― 演色性(CRI)とは
光には「ものの色をどれだけ自然に見せられるか」という指標があります。
これを演色性(CRI=Color Rendering Index)と呼び、太陽光を100としたときに、どれだけ近づけるかを示します。
CRI(演色評価数)の目安:
・Ra80以上:一般的な住空間で十分なレベル
・Ra90以上:料理・化粧・アートなど、色の正確さが求められる場所に最適
たとえば、同じ赤いリンゴでも、演色性が低い照明の下では“くすんで”見えてしまったり、料理があまり美味しそうに見えなかったりすることがあります。
「正しく美しく見える光(ヒカリ)」は、空間の質や気分を大きく左右するのです。
色温度で心を動かす ― “ヒカリ”の色が、気分や行動をコントロールする
朝から夜にかけて、太陽の光の色は変化します。
この自然な光のリズムは「サーカディアンリズム」と呼ばれ、私たちの体内時計と深く関係しています。
照明にも「色温度」という“光の色合い”があり、以下のように分類されます:
- 昼光色(6500K):青白く、活動的な印象。作業に向いています。
- 昼白色(5000K):自然な白色で、オフィスや学校でよく使われます。
- 温白色(3500K):あたたかさと明るさのバランスが取れた光。
- 電球色(2700K):落ち着きと癒しの空間に最適。
- ロウソク(2000K):とてもやわらかく、親密な空気感に。

ちなみに、自転車置き場の照明を高色温度(10000K=青白く冷たい印象の光)に変えたところ、盗難が減ったという話もあります。
「黄昏時に魔が差す」という言葉も、もしかするとこの“色温度の変化”と無関係ではないかもしれませんね。
光の「拡散」と「集光」を考える ― 火を囲むような親密さを、部屋の中に
照明器具には、光を一点に集める“集光”タイプと、広く散らす“拡散”タイプがあります。
僕がよくやるのは:
- 部屋の真ん中に集光する照明を設けて「親密な空間」をつくる
- 壁まわりには拡散の照明をレイアウトして「広がりのあるリラックス空間」を演出する
キャンプファイヤーを囲んで、本音を語り合った経験がある方もいるのではないでしょうか?
あれは火の「集光」と「揺らぎ(2/fゆらぎ)」が、人の心を緩め、距離を近づけてくれているのだと思います。

まとめ:照明は「空間の気配」をデザインできる
照明計画は、窓と違って“あとからでもコントロールしやすい”空間要素です。
だからこそ、ぜひ積極的に活用してほしいと思います。
今日のブログが、「“ヒカリ”って面白いかも」と思っていただけるきっかけになったらうれしいです。
次のお住まいづくりでは、ぜひ“照明計画”にも目を向けてみてくださいね。
